「学科、決めた?」
 翌朝、寝間着から着替えながらティセットは尋ねた。
「とりあえず、基礎の語学と算学かな」
 長めの髪を束ねながらヨウスが答える。

「それなら、中級から受けられるよ。
 俺たち中等部は、基礎科は免除してもらえるんだ」
「免除?」

「入舎前に試験、受けただろ?」
 ティセットは自分の寝癖が気になるようだ。
「あの試験受けて中等部に入れたってことは、基礎科……
 基礎科ってわかる?」

「語学、算学、道徳、作法?」
「そう、それ。
 中等部はそれの初級に合格したやつしか入れない」
 ティセットの寝癖は直りそうにない。

「文学は語学の中級以上、商学は算学の中級以上が必要だ。
 史学は文学の初級。
 文官になるなら、語学と算学の上級と、史学か算学の中級。
 武官は語学と算学の中級と、史学の初級と武術の中級以上。
 僧侶なら、まず……」

「ティス」
 ヨウスは同室生の言葉を遮った。
「……覚えきれない」
「まぁ、ね。
 目指すものを決めれば、学科も絞り込めると思うよ」

「ティスは、何か目指してるのか?」
 寝癖は諦めたティスは、まだ眠そうな顔で振り返る。
「文官」
「城勤めか……」

「ヨウスは?」
「俺……は、まだ……」
「まだ?
 って、歳いくつだっけ?」
「十九」
 ということになっている。

「二一まで、もうすぐだぞ?」
「……そうだな」

 この地方の成人は二一歳。
 ヨウスはとりあえず、十九歳としているが、それでもあと二年だ。

「二一歳で上級が一つもなかったら」
「……たら?」
 ティスが顔をグッと近付ける。
「強制退舎」
「……強制……」

 胸元の紐を結びながらティセットはニヤリと笑った。
「その前に、自分から出てくやつが多いけどね」
 ティセットの前の同室生は、それで自主退舎したらしい。

 部屋は入って直ぐに寝台が左右の壁を占領し、その枕元に机がある。
 右がティセット。
 左がヨウス。

 収納は寝台の下に取り付けられた引き出しだけ。
 あとは机の引き出しくらいだ。

 扉側の壁にかかる制服の下は何を着ても良いようだ。
 制服といっても、袖付き外套の胸元を幅広の紐で結ぶだけ。
 靴だけは新調した。



「結び目、曲がってる」
 ティセットが首をかしげて言う。
「……苦手なんだ、こういうの」
 笑いながら、しかたないなぁとティセットが結び直してくれた。

「算学と語学。
 どっちから行く?」
「じゃぁ、語学から」
「それなら、トルクも中級だから、安心だ」

 よし、とティセットが肩を叩く。
「朝は学食に行こう。
 トルクたちも来てるよ」
 頷いて、ヨウスは後を追って部屋を出た。