太陽の光に照らされキラキラと輝く水面。
 流れをせき止めるように両手が差し入れられ、小さな渦が起きる。

 水を溢れるほど汲んだ両手に口をつける。
 ゴクリ、ゴクリと喉を鳴らして飲み干す。
 口元を袖で乱暴に拭いた。
 ふぅ、と安堵の息が漏れる。

 川のふちに腰掛けると、体がずしんと重くなった。
 昨夜はずいぶん無理をしたらしく、しばらく動けそうにない。

 それでも脚を叱咤して立ち上がると、木陰と茂みの間に身を隠した。
 休むにしても、簡単に人の目に晒されるところではいけないのだ。

 なぜだ、と怒りが湧き出す。
 落ち着いていた激しい感情が呼吸を荒くし、地面に爪を立てさせる。
 強く食いしばった歯の隙間からギリギリと音がした。

 なぜ自分がこんなめにあわなければならないのか───それは何度考えても理不尽だと思った。
 主に見捨てられ、寄る場所を失った父は発狂のもと死に、自分に残されたのは過去に栄光を受けた異物だけ。
 家名というガラクタだ。

 たまたま一族に穢れが生まれただけで、これほど落ちぶれなければならないものなのか。

(いいや、違う!)
 男は思った。

 自分は何も悪くはない。
 一族の男子として恥じない行動をしてきた。
 悪いのはすべて、あの『穢れ』なのだ。

 あの『穢れ』さえいなければ、再び一族は栄えるだろう。
 自分は亡父の跡を継ぎ、立派な家長となれるだろう。

 男は深い深いため息をついた。
 少し休もうと、目を閉じる。

 耳元には川の流れる音と、遠くで鳥の鳴き声がするだけだった。