海辺の砂が立ちはだかっているかのような肌を持つ城がある。

 海岸の砂を運び、乾くと石のように硬くなる粘土と練り合わせた煉瓦で造られている。
 だから城は、まるで浜辺の砂城のようだ。

 柱は城を挟んで海と対極にある山の岩を削り、粘土を隙間に詰めてある。
 すべての石の色が微妙に異なり、地味な色合いの壁と対照的に色とりどりだ。

 二階から上は砂色の壁のあちこちに色貝殻がはめ込まれている。
 特に正面の壁には、国中の貝殻を集めて造られた王家の紋章が、白い陽射しに照らされてキラキラと輝いていた。

 王宮は広大で、足元に広がる城下街ほどもある。
 一の大門のうちには下仕えや一般兵が住まい、二の大門のうちには貴族やの屋敷が並ぶ。
 三の大門のうちには本宮があり、そのなかに小さいながらも四の大門と呼ばれるうちに王族の居住がある。

 下々の者には想像もつかないような豪邸。
 窓にはめ込まれた硝子には曇りの一点も見当たらず、知らずに手を差し入れてしまいそうなほど透きとおっている。

 城門から城へ向かう道は広く長い。
 途中、色さえついていれば本物だと疑わない彫刻が至るところに見られる。

 広い庭は初めて見る者に森と勘違いさせるかもしれない。
 だが本物の森には天使の石造を真ん中に置いた噴水も、宝石で飾られた小船が行き交う小川も、複雑にいり込む垣根の迷路も、緑と紫と赤の斑点のある大きな羽根を持つ鳥もいない。
 そこはまさに高貴なる方のお庭。

 庭をそろそろと進むと、木漏れ日に立ち尽くす一軒の平屋が見つかる。
 国王の足元に建つにしては粗末な小屋。
 いや、小屋にしては妙だ。

 軒下に並ぶ植木鉢や、腐れた板で蓋をされた井戸は不釣り合い。
 玄関の扉を見ても、鍵は中からかけるようだ。
 まるで人が住んでいたような気配。
 もちろん、城下街の端に住むものなら早速引っ越してきたくなるくらいの造りではある。

 六つある植木鉢は二つを除いて割れており、残った二つにも土は半分も入っていない。
 からからに乾いた白い土が残骸のように残っているだけ。

 鮮やかで賑やかな城の中でここだけまるでひっそりと咲く草花のよう。
 暖かな木漏れ日と清々しいそよ風と、小さな虫が訪れるばかりの、ひっそりとした隠れ家。

 赤に黒い斑点のある丸い虫が隠れ家の扉に止まる。
 何も見当たらなかったのか、すぐに羽根を広げて飛び去った。