わたしのちょうど向かい側の席は、三人掛けの席でした。

 そこにお兄さんが座っていました。
 お兄さんの隣りにおじさんが座りました。
 二人は悠々と、三人掛けの席に座りました。

 最終のまったりした車両は、それが許されるほどガランとしていました。



 ごろん…

 残業帰りでしょうか。
 疲れ顔のおじさんは座席に寝転がりました。
 上半身だけでしたが、大の大人が一人腰掛け、もう一人が横になるとぎゅうぎゅうです。



 目を疑いました。

 いえ、現実から目を逸してはいけません。
 わたしはこっそり、しっかり観察しました。

 ………。
 間違いありません。
 目を丸くしたお兄さんの顔こそが証拠です。



 おじさんの頭が。

 ちょっと薄れかかった侘しい頭部が。



 お兄さんのお尻の横にあるのです。

 ちょこんと。



 おろおろと視線を彷徨わせるお兄さんとは対照的におじさんは余裕で、肩を揺らして寝心地を確かめます。

 あまり良くなかったようです。
 おじさんはすぐに起き上がりました。



 ……心なしか。
 疲れ顔だったおじさんの顔が赤くなり、目が生き生きとして蘇ったように思えます。

 気のせいだったのでしょいか……。
 いえ、今日は深く突っ込まないでおきましょう。



 たとえ、お兄さんが下車すると慌てて追いかけて行ったおじさんがいたとしても。

 何もなかったと目を閉じましょう……。