その報せがはいったのは、南の国境をすべて覆い尽くして数ヶ月後のことだった。

 十二歳になった五番目の娘は、初めての外国を見て少し大人びたようだ。
 もともと、母親が自分を産んで寝込みがちになったことを知っているせいか、ほかの子どもたちよりも賢い子だった。四番目の娘とは同じ歳だが、数え間違えたのではと思うほどだ。

 お転婆なところは姉に似ていて、眉間に皺を寄せるとアルフレッドに似ているらしい。
 瞳の色はアルフレッド、髪の色は母親に似た。アルフレッドの子どもたちの中で一番、他国人の相が出ている。



「お気にかけておられました、聖女さまの使者ですが」
 執務室では父娘ではなく、王と王女として対する。誰が決めたわけでもないが昔からそうだ。
 二人だけの部屋で、暖かさは窓からの陽射しだけだった。

 五番目の娘は歳に似合わない憂いを帯びた。

「お亡くなりになったそうです」

「…………………………。なに?」
「使者どの一行は、最初の協議の帰り道、何者かにおそわれました。
 たしかに先にお帰りになったという証言があります。最後までともにいた騎士です。帰る途中の死傷者を伝えるようにと、軍師さまの命令を受けたそうです。
 その騎士が帰って十日たっても、使者どのはお帰りになりませんでした」

 声は淡々として、震えていた。
 それがどれだけ深い傷なのかアルフレッドにはわかる。役目と感情の狭間はあまりにも深い。

「来なさい、コレッタ」
 誰が決めたわけでもないが、執務室では親子というものがない。昔からそうだ。
 けれど今はアルフレッドが王で、明確な掟のないものに従う理由もないと思った。

 言われるままアルフレッドのそばに来た娘。その両脇に手を差し込み、抱えあげて膝に乗せた。

 十二歳。
 まだ儚いほど軽い。



 調停国の使者として赴いた先で、娘はどれだけ緊張を強いられたのだろう。
 叔父の娘は優しく迎え入れてくれただろうか。家紋指輪を持たせたといえど、少女を送ったことに憤慨しただろうか。

「聖女さまは、とてもやさしくしてくださいました。
 いつもすてきな笑顔でいらして、たくさんの人から声をかけられていました。聖女さまも、いろんな人に声をかけていらっしゃいました。
 わたしと、お友だちになってくださいました」
「そうか」



 戦場跡を見るようなことがあったのだろうか。
 たとえ大人の事情であろうと、せめて子どもの夢の中までは侵略してないでほしい。眠りくらいは安らかでいてほしい。

「たくさん、地面が焦げていました。赤茶色のところもありました。
 これが戦いのあとですと、将軍さまが見せてくださったのです。
 将軍さまはとても背が高くて、大きな人でした。わたくしを肩に乗せて、遠くまで見渡せるようにはからってくださいました。
 生まれたばかりの、新しいシュワルド国ですと、おっしゃいました」
「そうか。

 ……コリィ」
「はい。お父さま」

「よく、務め上げてくれた」

 抱きしめた娘からは乾いた太陽の匂いがした。