「でも欲張ったんだ。次の子が産めるかわからなかったから。
 ……子どもには二人の名前を、そのまま付けられた」
「……ウィル? マリー……ナ?」

 青い瞳。
 亡き叔父の清々しい空色。

 栗毛の髪。
 亡き叔母の艶やかな髪。

 戦場に立つ聖女。



 マリーナ。



「まさか、あの聖女か!!」

 ヤツは微笑んだ。
 よくできた生徒に満足した顔だ。

「なぜ今まで黙っていた!
 伯父上のお子だと? それならばウィンストン家の後継者だ。
 女だろうと構わない。連れて来い!」



「フォスター、ここに連れてきてくれ!」
「無茶を言うな。マリーはシュワルドの聖女だ。前線離脱なんてさせられるか」
 反面教師か!? 貴様が言うな! とアルフレッドは吼えたかった。
 だが今はそんなくだらないことに口を使う余裕はなかった。

 アルフレッドは叔父の子を引き寄せる算段を巡らせた。
 叔父たちは結婚していなかった。だが結婚していないことすら周囲は知らなかっただろう。
 庶子であることを隠せる。

 女であろうと、直系なら構うものか。
 口うるさいものなど、今のアルフレッドにはハエほどにしか感じない。

 女の身で戦場に立つ姿勢はアルフレッドに共感を覚えさせた。
 幼かった自分も戦場には不似合いだったから。

 手元におきたい。
 望むなら、あの遠い領地ではなく、姉とともにアルフレッドの近くで、何不自由なく暮らしをさせてやりたい。
 もちろん姉なら、喜んで面倒を見てくれるだろう。

「そこで相談だが」
 アルフレッドは思考を途切れさせた。
「……な………………なんだ?」
 嫌な予感がした。
「コリィ。今おまえには、九人の子どもがいるな? そのうちの一人に、早く王公爵を継がせろ」
「………………は?」
 叔父の子が見つかった今、何の必要がある?

「マリーには恋人がいる」
 太陽が踊りだしたと言われたほうが信じられた。

「なにぃい!」

「予定で」
「予定か!?」
 ヤツは重々しく頷いた。
「気持ち悪いほど主従関係を貫いている。スパッとまとまってくれると周囲もすっきりするんだがな」