「ねぇ閣下。
レセリアナ様がいなくなって、寂しい?」
「それは……まぁ……」
酒飲み仲間もいなくなり、新たな気晴らしを見つけなければならないと思っていた。
「わたしがほかの男と結婚してこの屋敷を離れたときは、寂しかった?」
「それは……まぁ」
ザク、と音を立てて果実に匙が刺さる。
「………………うん」
寂しくなかったといったら今度はイルスが刺されそうだ。
「レセリアナ様のときと同じくらい?」
「……? 従妹殿?」
「あなたはいつまで、わたしのことを『従妹殿』と呼ぶのかしら?」
従妹はため息をつきながら香菜を皿の端によける。
イルスは口元で小さく笑った。
「では従妹殿。
君がいま皿の端に避けたものを君が食べることができたなら、君の望む呼び名で呼ぼう」
素早かった。
従妹はぱくりと香菜を食べた。
ごくん
「名前がいいわ」
「は?」
「わたしのことは名前で呼んでいただきたいの。
それから人には、『婚約者』と。
来年には『妻』というのよ」
イルスの匙から酢タコが落ちた。
あごはかろうじて外れていないが、眼は開いたまま。
「約束よ、閣下」
「い……いとこどの?」
「名前で呼んで」
「イ、イ、ザ、イザ、イェ、ラ……」
彼女の名前はイザイェラ・カラーム。
相変わらず舌を噛みそうな名前だ。
「式はどちらで行いますの?
わたしとしてはやはり、聖堂で行いたいですわ。
陛下はお許しくださるかしら?」
今の従妹ならおそらく「うん」と言わせるだろう。
それだけの迫力がある。
「いったいどうしたんだ、いとこ……イザイェラ」
イルスはいったん、匙を置いた。
「急いで再婚しなくても、次はゆっくり相手を決めたらよいだろう?
それまでここにいたらいい」
「あなたってホント、バカね。
っていうか、鈍感ね」
「は?」
「わたしの気持ち、考えたことある?
知ろうと思ったことはある?」
「……従妹殿?」
「あなたはいつまで、わたしのことを『いとこ』と呼ぶのかしら?」
「…………?」
レセリアナ様がいなくなって、寂しい?」
「それは……まぁ……」
酒飲み仲間もいなくなり、新たな気晴らしを見つけなければならないと思っていた。
「わたしがほかの男と結婚してこの屋敷を離れたときは、寂しかった?」
「それは……まぁ」
ザク、と音を立てて果実に匙が刺さる。
「………………うん」
寂しくなかったといったら今度はイルスが刺されそうだ。
「レセリアナ様のときと同じくらい?」
「……? 従妹殿?」
「あなたはいつまで、わたしのことを『従妹殿』と呼ぶのかしら?」
従妹はため息をつきながら香菜を皿の端によける。
イルスは口元で小さく笑った。
「では従妹殿。
君がいま皿の端に避けたものを君が食べることができたなら、君の望む呼び名で呼ぼう」
素早かった。
従妹はぱくりと香菜を食べた。
ごくん
「名前がいいわ」
「は?」
「わたしのことは名前で呼んでいただきたいの。
それから人には、『婚約者』と。
来年には『妻』というのよ」
イルスの匙から酢タコが落ちた。
あごはかろうじて外れていないが、眼は開いたまま。
「約束よ、閣下」
「い……いとこどの?」
「名前で呼んで」
「イ、イ、ザ、イザ、イェ、ラ……」
彼女の名前はイザイェラ・カラーム。
相変わらず舌を噛みそうな名前だ。
「式はどちらで行いますの?
わたしとしてはやはり、聖堂で行いたいですわ。
陛下はお許しくださるかしら?」
今の従妹ならおそらく「うん」と言わせるだろう。
それだけの迫力がある。
「いったいどうしたんだ、いとこ……イザイェラ」
イルスはいったん、匙を置いた。
「急いで再婚しなくても、次はゆっくり相手を決めたらよいだろう?
それまでここにいたらいい」
「あなたってホント、バカね。
っていうか、鈍感ね」
「は?」
「わたしの気持ち、考えたことある?
知ろうと思ったことはある?」
「……従妹殿?」
「あなたはいつまで、わたしのことを『いとこ』と呼ぶのかしら?」
「…………?」