「では、陛下。お返事を聞かせてください」
「きゅ、き、急なことだ。せめて数日待て」
「申し訳ありません、陛下。法王は意外と短気なのです」
「では一晩」
「今夜で一晩、ということですか?」
「うっ……」

 男に背を向けたフィーはイルスに歩み寄り、窓に手をついた。
「陛下。さきほどの魔導士ですが、残念ながら低級魔導士です」
「む?」
 唸っていた男が顔を上げると、汗が吹き出していた。

「院から派遣される魔導士は、中級二名以上でなければなりません。
 この意味が、おわかりになりますか?」

「人手不足だと聞いている」
「えぇ。現在、魔導士は激減しています。……このサース国のみで」
 男は眉を寄せた。
「何だと?」



「先年、といっても数十年前ですが、大魔導師は交代しています。
 現師になられてから魔導士は徐々に増えています。
 まだ低位ばかりですが、次第に上位も増えていくでしょう。

 しかし今後も、サース国では減りつづけるでしょう」

 フィーが男を振り返る。
「陛下。この意味、おわかりになりますね?」
「な、な、なん、だと?」

 イルスにはまったくわからなかった。
 だが男にはわかったらしい。

「陛下。お心、改めなされませ」



「で、で、であえー!」

「来ませんよ。
 誰が来ると言うんです?
 あの弱々しい魔導士ですか?」

 男はうめいた。
 うめいて、手にしていた剣を走らせる。

 イルスはフィーの前に出た。
 腰に剣はない……はずだった。ずっしりと重たいものがある。

 考える間もなく剣を抜き、一閃を防ぐ。
 軽く弾いて腹を蹴ると、男は避けもせず転がった。
(よ、弱い……)
 いじめっ子になった気分だった。

 イルスが手を差し出すと男は怯えて後退る。
 悪者になった気分だ。