人の気持ちを読み取ることができる。

 と言ったら変態だ。
 もしくはバカだ。


 人の気持ちを朗読して取り上げるなんて何事だ。

 妹の秘密の日記をこっそりと読むプー兄貴か。

 プライバシーというものを知らんのか!



「しかたないだろ?」
「しかたなくない!

 よるな変態!
 メイド喫茶で癒されてこい!!」


 十余年来の友人はやるせなさそうな顔をした。

 いきなり呼び出されたのは神崎で。
 お風呂上がりのさっぱり爽快気分を取り上げられたのも神崎で。
 母に追い立てられて出て来たので秋中の夜の寒さに震えているのも神崎である。


 何故。

 何故。
 と書いてなぜ?

「俺、今おまえが考えてることがわかるんだ」
 と言い出して放とうとしていた文句を仕草まで付けて言い当てられた神崎ではなく、やつが悲しい顔をするんだ。
 オプションよりも低価格がいいなんて言ってる場合じゃない。



 冷静だ。
 冷静に対処しろ神崎。

 ここで十余年来の友人をなくすには、十余年来が泣く。


「え、えっちゃん。
 病院に行こう」
 友人は渋い顔をした。

 いかん。
 今のはミスった。

「えっちゃん。
 とりあえず座って話そう」


 それもそうだなと、友人は屋根の上に座り込み、真っ黒な夜空を見上げた。
 そして神崎に話せずにいたというファンタジーなことを話しだす。


 その隣りに座った神崎は友人の話など右から左で、脳ミソをフル回転させた。
 いかにして友人を屋根から室内に移動させるかが毎回の悩みどころだ。


 高所恐怖には堪える夜だった。