「好きって言えたら百万円あげる」


 ウソついたら針千本飲ませる。


 なるほど。
 そんな類義語もあったか。


 なんて発見にワクワクしている場合じゃない。



 早坂イサは睨んでいる。
 出すもん出しなと脅しているわけじゃない。
 欲しいものを言葉にすれば大抵親が叶えてくれる早坂が、平凡なサラリーマンの息子から何をせびろうってんだ。


 確かに、早坂イサはちょっとしたお嬢様だが、早坂家にはたった一言のために百万円払えるほどの経済力はないはずだ。
 あったてしても、あるかもしれないが、そんな親バカでないと信じたい。



 早坂イサはオレを睨んでいる。
 今日はオレンジのアイシャドウか。



「はやさかぁ。
 オレさぁ、百万円て、結構簡単に稼げるって思う」
「あんたの頭で?」
 言ってくれるじゃないか学年三十位以内。
 さすがだな。

「オレ、バイトで毎月八万は稼いでるから。一年ちょいで百万だろ?
 結構簡単だよな」

「…………」
 あ。

 やばい、やばい。
 早坂がヘコんでる。
 つむじが見えてる。ちょっと左寄りだ。

「だ、だからさぁ、早坂。
 オレがおまえにいっぺん好きって言ったら」
 好き、のキーワードにつむじが揺れる。

 待て待て。
 まだ顔あげるな。

 最後まで聞け、早坂。
 今オレの顔を見るんじゃない。

「おまえ百回、オレに好きって言え」


 早坂のまぶたのラメが眩しい。

 そんなに見るな。
 見るな見るな。

 見るのは好きだけど見られるのには慣れてないんだ。



 ぷるんとした唇。
 微かに動いた。



 思わず走り出したオレの口から、百回分のスイッチが飛び出した。


「早坂が好きだぁあ!」

 顔から火が出た。

「大好きだぁあぁあ!!」

 これであと三百回は聞けるかも。