時にはじれったいと思う時の流れが早急に進んだ。
 年が明けて雨が降り、イルスが五度目の虹を見たときだった。

「閣下。地方で砂嵐が発生しました」
 部下の言葉に、イルスは椅子を音立てて立ち上がった。
「どこだ?」
「砂の海砂漠とウバラ地方の境です」
「ウバラ……」
 〈水守〉の住まいが近い。好機だ、とイルスは思った。



 イルスは足早に主の下へ急いだ。

「陛下、砂嵐です」
「支度は?」
「あとはレセリアナたちだけです」
 そうか、と主はうなずく。
「国元への書はしたためてある。
 時季を見計らって使者を立てよ」
「はい、陛下」

 すべて巧くいくと、イルスは思っていた。



 レセリアナたちに知らせようと向かうと、二人は浮かない顔でいた。
「どうした? 悪い知らせか?」
 レセリアナの手には一通の書状があった。

「閣下……」
「帰還命令がでました」
「なに?」
「サース国王からの帰還命令です。即位記念式に出るようにとの」

 イルスは自分の目でも書状を改めた。確かに、帰還を命じる旨がしたためてある。
「こんなときに!」

「おそらく、内乱でしょう」
「内乱? サース国でか?」
 スティードはうなずいた。

「自分の国の、こんなことを言うのもなんですけどね。
 隠してたってなんの得もないし……」
「なんだ?」

 スティードはレセリアナと視線を合わせて一度うなずいた。
「現サース国王には兄がいます。
 母君が側室であったため、継承権は二位下げられ、第三位継承者です。

 母君は公国の姫君で、ご幼少の頃はお二人で公国にお住まいでした。
 このため、長いこと暗黙されていた内政の裏取引きに染まらず、嫌悪感をもたれています」
「裏取引? サース国でか?」

「裏取引の根本となるものは、前王の頃から始まっていたようです。
 厳しい取り立てや押収を賄賂でごまかしています。
 王もそれを暗黙することによって、規定の税を完璧に取ることができています」

「王も……?」
「自分の取り分がしっかりあるのなら問題ないってことでしょう」
「なんということだ……」

「この批判に賛同したのが、第二位王位継承者でもある、現王の叔父に当たります。
 最初は王兄、叔父君共に牽制しあっていたんですが、叔父君は王位よりも外相力が欲しかったようで、王兄を立てることにしたようです」