「コリィ。わたしね」
 手元の薔薇を見つめる。
 黒い薔薇。珍しい色。毛色の変わった花。
 じきに枯れてアルフレッダの手から離されるだろう。それはアルフレッダにこれ以上花を生かす力がないから。
 それでも。
「好きなの」
 永遠に手にいらないとわかってはいても。

 子どものようだと笑われてもいい。この気持ちは偽りではない。ままごとではない。
 今なら、大切なもののなかから好きなものを選び抜いて、さらにひとつを選べといわれれば、迷わず選ぶだろう。どれが本物の恋だと問われれば、臆面もなく答えるだろう。
 彼には恋をした。

 アルフレッダは目線を上げる。いつのまにか弟は背が高くなっていた。幼い頃はアルフレッダよりも小さくて、泣き虫で弱かったのに。
 薔薇を握る手に弟の大きな手が重なる。
「姉上。わたしたちは、ずっとそばにいます」
 弟の目は清々しい空の色をしていた。

 彼はもういない。
 けれど、守ろうと誓い合った人たちはいる。

「えぇ。そうね」

 じきに空は白み始めた。
 暗さが薄れ、弟の横顔がはっきりと見えるようになる。弟の顔に精悍さが見え始めつつあることを知った。国の主となり、人の父となった弟はさらに成長するだろう。
 それでも、いつまでもアルフレッダの弟なのだ。
 いつまでも。
 ずっと。
 そばにいてくれるだろう。



 朝焼けの薔薇園で。
 弟たちに愛を与え続けよう。
 永遠に───アルフレッダは誓った。



――――終