「フレッダ?」
彼の声。
立ち上がろうとしてふらつき、彼に支えらて踏みとどまる。しがみつこうとして引き寄せられ、痛いほど肩を掴まれた。
キンッ、と高い音が間近で跳ねる。
視界の隅で何かがきらめく。
鋭い風が音をたて、獲物がなぎ払われる。
彼が一歩後退り、アルフレッダも引きずられる。
目の前にある人影が揺れ、崩れ落ちた。倒れた人影はぴくりともせず、荒い呼吸を繰り返すアルフレッダの肩以外、動くものはなかった。
冷えた緊張が緩み、彼を掴んだままアルフレッダは座り込んだ。手に触れる土のしっとしとした冷たさが心地よい。
「ケガは?」
かがんでアルフレッダの背をなでながら訊ねる声に、首を振って答える。
いつまでも恐ろしさが消えない。手を離せば暗い底なしの穴に落ちていくのではないかと思った。
安心したくて、彼の顔をよく見ようとしたアルフレッダは、視線を動かす途中、彼の片手が自身の腹部を押さえているのに気づいた。その手に赤い筋が走っている。
彼の衣服は濃色で、どれほどなのかはわからない。けれど確実に濡れている。
無骨な指の隙間からなにか赤いものが溢れ、伝い落ちた。
「……あ」
声が目の前の現実を受け入れがたいと喘ぐ。視界は赤く染まっていくのを凝視して動かない。
「ケガは?」
首を横に振って答える。彼がそばにいてアルフレッダが怪我をするなど一度もない。
彼はアルフレッダの騎士で、誓いに誠実な人だから、主にまで危害を及ばせない。見事なくらいに彼は盾で、剣だ。
彼が弟を迎えに行く間と彼が弟と戦場に向かってからは彼の息のかかったものが、戦場から戻ってからは彼自身がアルフレッダを守ってくれた。かすり傷ひとつ、髪の毛一本失われていない。
失ったものがあるとしても、彼はそれを拾いもしない。アルフレッダの手から離れたものよりも、アルフレッダ自身を守り通す。
彼の声。
立ち上がろうとしてふらつき、彼に支えらて踏みとどまる。しがみつこうとして引き寄せられ、痛いほど肩を掴まれた。
キンッ、と高い音が間近で跳ねる。
視界の隅で何かがきらめく。
鋭い風が音をたて、獲物がなぎ払われる。
彼が一歩後退り、アルフレッダも引きずられる。
目の前にある人影が揺れ、崩れ落ちた。倒れた人影はぴくりともせず、荒い呼吸を繰り返すアルフレッダの肩以外、動くものはなかった。
冷えた緊張が緩み、彼を掴んだままアルフレッダは座り込んだ。手に触れる土のしっとしとした冷たさが心地よい。
「ケガは?」
かがんでアルフレッダの背をなでながら訊ねる声に、首を振って答える。
いつまでも恐ろしさが消えない。手を離せば暗い底なしの穴に落ちていくのではないかと思った。
安心したくて、彼の顔をよく見ようとしたアルフレッダは、視線を動かす途中、彼の片手が自身の腹部を押さえているのに気づいた。その手に赤い筋が走っている。
彼の衣服は濃色で、どれほどなのかはわからない。けれど確実に濡れている。
無骨な指の隙間からなにか赤いものが溢れ、伝い落ちた。
「……あ」
声が目の前の現実を受け入れがたいと喘ぐ。視界は赤く染まっていくのを凝視して動かない。
「ケガは?」
首を横に振って答える。彼がそばにいてアルフレッダが怪我をするなど一度もない。
彼はアルフレッダの騎士で、誓いに誠実な人だから、主にまで危害を及ばせない。見事なくらいに彼は盾で、剣だ。
彼が弟を迎えに行く間と彼が弟と戦場に向かってからは彼の息のかかったものが、戦場から戻ってからは彼自身がアルフレッダを守ってくれた。かすり傷ひとつ、髪の毛一本失われていない。
失ったものがあるとしても、彼はそれを拾いもしない。アルフレッダの手から離れたものよりも、アルフレッダ自身を守り通す。