アルフレッダは自分のことがおかしくて小さな笑い声を上げた。声を聞いた彼は振り返ったが、アルフレッダはなんでもないと首を振る。

 バカなアルフレッダ。
 哀れな自分。

 彼が振り返ることはあっても歩み寄ってくれるはずがないことなど、とうの昔にわかったはずだ。───あのとき。

『家族はいないの?』
『いる』
『心配しているでしょうね』
『そうだな。特に小さいのが』
『小さいの?』
 彼は何でもないことのように言った。
『子どもがいる』

 彼はいくつだろうか。訊いたことはない。気にしなかった。
 けれどそのとき、彼と自分の歳の差を思い知った。自分はまだ人の妻になるには幼く、彼は成人していた。
 アルフレッダが恋をしても人々は微笑ましい子どもの感情だと思うだろう。けれど彼が恋をすれば人々はその恋人に嫉妬し、羨望し、納得するだろう。

 今はもうアルフレッダも見合いをして婚約者を選び、夫となる人を見つけなければならない歳になった。それが義務だという。
 彼はもうずいぶん前にそのときを終えたのだ。
 ───納得したはずだった。

 なのに。
 いまだに未練がましく期待を抱くなんて、高い木にひっかかった帽子を取ろうと手を伸ばしたときくらい愚かだ。
 そんな自分を笑ってやりたい。大声で。