「あなたの現実はどこにいるの?」
「遠くて近くにいる」
 虚をつかれた。
「……どんな、人?」
 苦しいくらいに鼓動が鳴る。
 幼い頃、風に飛ばされた帽子を追っていたときと同じくらい胸が苦しい。あの時は幼すぎる自分を、今は大人である自分が嫌になる。

「強くてよく泣く」
「強いのに泣くの?」
「強いから泣く」
「なぜ?」
「限界の近くにいるから。できることとできないことを多く思い知らされる」
「それは弱いからではないの?」
 彼は笑う。
「自分の弱さを思い知ったことはないか? それを受け入れられたか?」
 どきりとした。
「フレッダ?」
 顔を覗き込まれておもわずうつむく。
 きれいな顔が見慣れたものになるたび、見つめていられる時間が短くなる。



 彼は身を起こした。軽く手を引かれてまた歩き出す。
 大きく鳴る鼓動が聞こえはしないかと、アルフレッダはちらちらと彼を見上げる。アルフレッダの気持ちなどどこ吹く風、彼は気づく様子もない。
 落胆と安堵を一緒に味わう。
 わかってはいることなのに期待してしまう。

 期待?

 何を期待しようというのか。
 アルフレッダは姫で、彼は騎士。
 姫は主で、騎士は従。