小袋が鈍い音をたてて落ちた。小袋には甘い琥珀色の飴が詰っていて、木に実が生るのと同じくあたりまえに彼はくれる。
 優しい声で辛いことを言うのに作るものは甘い。
「ありがとう」
 木の葉がそよぐ。

 いつもこうして慰められ、はぐらかされる。難がる子をあやす甘い言葉の代わり飴がある。
 アルフレッダはもう幼くもなく、彼の背に羽がないことも知ったのに。手は触れても鼓動の早さは同じにならない。見つめても瞳の奥を見透せない。
 姫と騎士───主従の壁は厚い。
 この壁の厚さは、平和の証し。

 もう二度と、あんな思いはしたくない。



 弟が人質として送られていった日から間もなく。国は内側から大きく揺さぶられた。
 送られてきた人質は弟よりもずいぶん年上で、弟と同等の価値があるとは思えない人間だった。明らかに、対王族の末席のものだった。弟は第二位継承者だったというのに。

 濃縮された不安は強大な火薬となり、小さな火で爆発した。攻の王派と守の王子派と、さらに寝返るものが出た。
 アルフレッダの弟はそのとき忘れ去られた。生まれてくる末子も。

 どうしてよいのかわからず、どうすればよいのかわからなかった。
 幼いアルフレッダは、守られることはできても守る力はない。それは今でも変わらない。

 あの時、彼に声をかけられなかったら、アルフレッダは逃げ出していたかもしれない。

『どうした?』
『助けて』
『どうした?』
『コリィを助けて!』
 彼は少しだけ考えた。

『換わりに、何をくれる?』