光井は不機嫌だった。
「おもしろくねー」
 それが理由。

 彼はおもしろいことならなんでも首を突っ込むタイプだった。
 嫌がられようが構うものか。楽しいことは逃がしてなるものか。
 楽しいことは俺のもの、そんなプチ・ジャ○アンタイプだった。

「何がおもしろくないって?」
「聞いてくれよチーちゃん」
「チーちゃんはやめい」
 そんな抗議は光井の耳には入らない。

「オレさー、ミツイじゃん? そしたら物理のマイマイがさ、『今日は三日だから光井君ね』なんて言って俺あてやがったんだ」
「ふーん」

「でさー、それカナちゃんに言ったらさー、カナちゃんてば『予習してない光井が悪いんじゃん、きゃはははは』とか言いやがったんだ」
「……ふーん」

「んでさー、それネギに言ったらサー、ネギってば『あぁ、今日は三日かぁ』なんてとぼけたこと言いやがったんだ」
「…………ふーん」

「んでもってさー、それソーカに言ったらさー、あいつなんていったと思う?」
「『サンサンデーだ』」
 近所のスーパー・サンサンの特売日のことだ。
「ビンゴ。すばらしいよチーちゃん」
「チーちゃんはやめい」

「あー、おもしろくねー」
 それだけか。チヅルはため息をつきたくなった。

「あー。なんかおもしれーことないかなー」

 チヅルは思った。
 光井が『おもしろくねー』というかぎり世界は平和だと。