パーシィク、あなたもっと自分を知ったほうがいいわ。迷惑よ。
 なぜ?
 毎日鏡見てるの? 自分がどんな顔をしているかわかる?
 母似で、人に好かれやすい顔なんだろう?
 だめね。ぜんぜんダメ。ちっともわかってないわ。
 じゃぁ、君にはわかってるのか?
 もちろんよ、許婚殿。あなたはね───

 あの時、元許婚はなんと言っただろうか。そう、確か……
『男も女も見境を無くさせるのよ』
 どういう意味だったのだろう。
 もしかして、こういう意味だったのだろうか。
 つまり。

「一目惚れだったんだ!!」
と従兄に言わせるような。

 小さい頃から趣味を聞かれれば『パーシィクいじめ』と答えるようなヤツが、実はそのイルスに惚れていたなんて。筋肉がお菓子でできているなんていうくらいぶっ飛んでいる。

 イルスは耳だけを宮廷に置いてきたかのように、従兄の告白を遠くで聞いていた。
 その呆然とした様子から、肩を掴む痛みで現実に引き戻される。
「どうなんだ!?」
 何が?
 現から戻ったばかりのイルスにその質問の意図は掴みかねない。

「聞いていたのか!?」
「あ……あぁ、聞いていた」
 聞くだけ聞いた。
「そ、そそれで!?」
「は?」
「返事は!?」
「は?」
 目を血ばらせた従兄は歯を剥き出しにする。イルスの肩はぎりぎりと締め付けられた。
「いいかげん、離せ。痛い」
 従兄は熱いものに触ったように手を離す。

「返事といわれても、どう答えればいいんだ?」
「おれが好きか嫌いかだ」
 そんなものは決まっている。

「嫌いだ」