「パーシィク」
「な、なんだ?」
「おれは…………」
 従兄は固まった。
 早く言ってくれ、とイルスは心中で叫ぶ。
 実は足が臭いとか、このまえ恋人に振られたとか、俺も皇都に行きたいとか、陛下はどんな人だとか、言いたいことはすばやく言ってくれ!
 すばやく答えるから!
 そしてすばやく逃げ去るから!!

 イルスは聞かずに去るということができない親切な性質だった。

「実は……」
 うんうん。
「おれは……」
 うんうん。
「実を言うと……」
 ほうほう。
「おれは……」
 うんうん。
「………………」
 止まるな!

 逃げてしまおうかと一瞬本気で考えた。
 だが従兄の珍しく真剣な表情に見つめられ、足の裏が地面から離れなくなる。

「どうした? 言ったほうが楽だぞ」
 バカみたいに親切心を出してしまう。
 すると。
「パーシィク」
 ガシッ、と大きな手に肩を掴まれる。

 膝蹴りか!?

 反射的に下腹に力を込めたイルスだが、いつまで経っても蹴りは飛んでこない。
 恐る恐る顔を上げると、真剣な眼差しがイルスを見下ろしていた。
「…………」
「………………」
「……………………」
「…………………………」
 なんだろう、この熱い眼差しと沈黙は。
 なにやら恐ろしい。

「おれはな、パーシィク」
「…………」
「お…………」
 早く言え!

「おまえのことが好きなんだ!」