無事に敵を送り返したイルスだが、母の態度が気にかかった。
「どう思う、じい?」
「珍しく他国の方に接することができて、お喜びになられたのでしょう」
「本当にそう思うか?」
「……」
「…………」
「……うぅっ! ゲホ、ごほっ。し、心臓が……!」
「ぎっくり腰で心臓は痛まん!」
「ぐほぉ、は、吐き気が……」
「じい!!」
いいかげんイルスも、このやりとりには疲れた。
「弟の結婚はいつだ?」
「はい。来月の初旬です」
「ではそろそろ、帰る算段をしたほうがいいだろう」
「……はい」
「どうした?」
上司は、返事の冴えないイルスに問いかける。母がレセリアナの出席を望んだことを言うと、宰相は唸った。
イルスの実家まで馬で三日、馬車なら四日半の行程。式当日と往復を最短で計算しても七日。当日に到着して当日に出発すれば六日半だろうが、レセリアナにそこまでさせる必要はない。
王妹殿下を遠出させることはあまりしたくない。できることなら皇都から出したくない。───とイルスは真面目に考えていたのに。
「うらやましい」
「は?」
「わたしもレイレナ殿にお会いしたい」
どうやら宰相も母の信者の一人らしい。
さすがは美姫。四人の子持ちだろうと人気は衰えない。
「そうか。もう来月か。しばらくは家に留まるのだろう?」
「恐らく、そうなるかと」
主は特に咎める様子もなく頷かれた。
この人ならまともな答えを下さるのではと、イルスは話してみた。
「母君はよほど、その少女が気に入ったのだな」
「ですが陛下、レセリアナ殿は王妹殿下です。公式な権限はなくとも、王命を受けるような人です。出先で何か遭っては外交問題になります」
「サース、か」
主の瞳が遠くを見つめるものになった。遠い過去を思い出されたのだろう。
イルスは、主の過去は人の噂や歴史書に書かれたものしか知らない。先日のように主の口から聞いたこともない。主はご自身のことはあまり話されない。
内容は衝撃的だったが、話してもらえたことは少しだけうれしかった。それだけ打ち解けてくださったのだと思った。
だが長寿の主にはまだまだ謎が多い。
何を考えていらっしゃるのかもわからない。
「陛下?」
「……あぁ。本人に尋ねてみてはどうだ?」
まともな答えは、やはり主に求めるものだ。
「どう思う、じい?」
「珍しく他国の方に接することができて、お喜びになられたのでしょう」
「本当にそう思うか?」
「……」
「…………」
「……うぅっ! ゲホ、ごほっ。し、心臓が……!」
「ぎっくり腰で心臓は痛まん!」
「ぐほぉ、は、吐き気が……」
「じい!!」
いいかげんイルスも、このやりとりには疲れた。
「弟の結婚はいつだ?」
「はい。来月の初旬です」
「ではそろそろ、帰る算段をしたほうがいいだろう」
「……はい」
「どうした?」
上司は、返事の冴えないイルスに問いかける。母がレセリアナの出席を望んだことを言うと、宰相は唸った。
イルスの実家まで馬で三日、馬車なら四日半の行程。式当日と往復を最短で計算しても七日。当日に到着して当日に出発すれば六日半だろうが、レセリアナにそこまでさせる必要はない。
王妹殿下を遠出させることはあまりしたくない。できることなら皇都から出したくない。───とイルスは真面目に考えていたのに。
「うらやましい」
「は?」
「わたしもレイレナ殿にお会いしたい」
どうやら宰相も母の信者の一人らしい。
さすがは美姫。四人の子持ちだろうと人気は衰えない。
「そうか。もう来月か。しばらくは家に留まるのだろう?」
「恐らく、そうなるかと」
主は特に咎める様子もなく頷かれた。
この人ならまともな答えを下さるのではと、イルスは話してみた。
「母君はよほど、その少女が気に入ったのだな」
「ですが陛下、レセリアナ殿は王妹殿下です。公式な権限はなくとも、王命を受けるような人です。出先で何か遭っては外交問題になります」
「サース、か」
主の瞳が遠くを見つめるものになった。遠い過去を思い出されたのだろう。
イルスは、主の過去は人の噂や歴史書に書かれたものしか知らない。先日のように主の口から聞いたこともない。主はご自身のことはあまり話されない。
内容は衝撃的だったが、話してもらえたことは少しだけうれしかった。それだけ打ち解けてくださったのだと思った。
だが長寿の主にはまだまだ謎が多い。
何を考えていらっしゃるのかもわからない。
「陛下?」
「……あぁ。本人に尋ねてみてはどうだ?」
まともな答えは、やはり主に求めるものだ。