「姉上、あれはいますか?」
やっと落ち着いて座ったかと思うと、弟はそんなことを言い出した。
「あれとは何です?」
「あれはあれです」
「あれではわかりません。ちゃんと名前を言いなさい」
弟は口をへの字に曲げる。
「……あなたの、騎士です」
「庭じゃないかしら? 今日は暑いから」
「騎士失格だ。こんなところで昼寝なんて」
アルフレッダは声を立てずに笑った。
「昼寝じゃないわ。ロブに字を教えてるの」
「ロブ?」
「新しい庭師よ。薔薇の育て方を本にしてもらおうと思って」
「代筆させたらいいでしょう」
「せっかくだもの、いいでしょ?」
だめだ、なんて弟は言わなかった。かわりにいいとも言わないけれど。
「それで、彼に何か用なの?」
「近衛から苦情が来ています」
「苦情?」
「訓練に出ない騎士がいると」
「そう言っているのは、ロアン殿だけではない?」
弟の眉間のしわが深くなる。いつも難しそうな顔をしているが、表情がないわけではない。
「諦めたほうがよいと思うわ」
「一応、言っておこうと思っただけです」
「わたしから話しておくわ。彼はわたしの唯一の親衛の者で、ほかにいないのよ。訓練にでている間がないわ」
「ほかにも選んだらどうです?」
「良い方がいないわ」
「あなたは……姉上は、贅沢です。夫にも騎士にも、求めすぎる」
「女は身の回りを固くしなければならないのよ」
弟の眉間のしわはいっそう深さを増した。
やっと落ち着いて座ったかと思うと、弟はそんなことを言い出した。
「あれとは何です?」
「あれはあれです」
「あれではわかりません。ちゃんと名前を言いなさい」
弟は口をへの字に曲げる。
「……あなたの、騎士です」
「庭じゃないかしら? 今日は暑いから」
「騎士失格だ。こんなところで昼寝なんて」
アルフレッダは声を立てずに笑った。
「昼寝じゃないわ。ロブに字を教えてるの」
「ロブ?」
「新しい庭師よ。薔薇の育て方を本にしてもらおうと思って」
「代筆させたらいいでしょう」
「せっかくだもの、いいでしょ?」
だめだ、なんて弟は言わなかった。かわりにいいとも言わないけれど。
「それで、彼に何か用なの?」
「近衛から苦情が来ています」
「苦情?」
「訓練に出ない騎士がいると」
「そう言っているのは、ロアン殿だけではない?」
弟の眉間のしわが深くなる。いつも難しそうな顔をしているが、表情がないわけではない。
「諦めたほうがよいと思うわ」
「一応、言っておこうと思っただけです」
「わたしから話しておくわ。彼はわたしの唯一の親衛の者で、ほかにいないのよ。訓練にでている間がないわ」
「ほかにも選んだらどうです?」
「良い方がいないわ」
「あなたは……姉上は、贅沢です。夫にも騎士にも、求めすぎる」
「女は身の回りを固くしなければならないのよ」
弟の眉間のしわはいっそう深さを増した。