侍従を呼んで馬車を呼ばせ、屋敷へと戻る。しばらく誰とも会いたくなくて、庭にお茶の用意をさせると人払いをした。
 茶器は二人分。焼き菓子も二皿。そのことについてはもう誰も疑問をはさまない。
 しばらく茶器から立ち上る湯気を眺めていた。



 風の音かと思うくらい小さな歌声。
 耳を澄ますと、遠い異国の歌。知らない旋律で聞き取れない歌詞が紡がれる。

「何の歌?」
 最後の音が終わり、余韻が消えてから、アルフレッダは訊ねた。
「大昔の歌」
 そばの大きな木の上から声が返った。
「どこの?」
「……北のほう、だったかな」
「森の? 草原?」
「別の大陸だ」
「べつの……」
 上手く想像できなかった。アルフレッダは旅行をしたことがないし、外国のことは本や教師から習った分しか知らないから。

「どんなところ?」
「ここより寒い」
「どれくらい?」
「息が凍るくらい」
 アルフレッダは驚いて、まぁ、と口を開けたまま固まった。
 空気が凍るほど寒いところに人が住めるのだろうか。凍った空気は音を立てて地面に落ちるのだろうか。そうなれば、手に取ることができるのに。嫌なため息は袋に詰めて遠くに捨てさせてしまうのに。