ずっと前───先の大戦では多くの人を失った。夫が息子が、孫が戦死した。子と、親と生き別れ、あるいは敵の手に落ち、将は馘を打ち落とされた。
毎日が緊張と安堵の繰り返し。
世界は広すぎて、目に見えるだけしか守れず、遠くで大切な人たちをたくさん失った。
再会の約束は破られつづけ、現実の痛みから逃れようと縋った過去は、遠すぎて。未来は見えなかった。
大切な人の死に堪え切れず狂い、涙し、死神の誘いを受けた者もいる。
夫の訃報を聞き、出産後急死した義母。混乱のなかで産まれた末弟は忘れられがちで、アルフレッダが自分の乳母に面倒を頼んだ。よく泣く元気な子で、周りをハラハラさせながら大きくなった。
大き過ぎる責を負った弟は涙を止めた。じっと押し黙り、考えることも増えて寡黙になった。元敵国から姫を娶るときも少しも笑わなかった。
時折父と兄の墓前に座り込んだ姿を見かけても、見ない振りをした。
片目を失明した伯父は近頃寝込みがちで、見舞いに行くと無理にでも起きようとする。主家の者といえど申し訳なくて、奥方にそっと見舞いの品を届けるだけにした。
踵を失った従兄弟は我が子を他家に預る準備に追われている。王家の血を引く男子の慣習で、五歳から十八歳のあいだで五年ほどを他家に預る。
その前に末弟が行くだろう。けれどアルフレッダには、末弟と五年も離れていられる自信はない。
毎日が緊張と安堵の繰り返し。
世界は広すぎて、目に見えるだけしか守れず、遠くで大切な人たちをたくさん失った。
再会の約束は破られつづけ、現実の痛みから逃れようと縋った過去は、遠すぎて。未来は見えなかった。
大切な人の死に堪え切れず狂い、涙し、死神の誘いを受けた者もいる。
夫の訃報を聞き、出産後急死した義母。混乱のなかで産まれた末弟は忘れられがちで、アルフレッダが自分の乳母に面倒を頼んだ。よく泣く元気な子で、周りをハラハラさせながら大きくなった。
大き過ぎる責を負った弟は涙を止めた。じっと押し黙り、考えることも増えて寡黙になった。元敵国から姫を娶るときも少しも笑わなかった。
時折父と兄の墓前に座り込んだ姿を見かけても、見ない振りをした。
片目を失明した伯父は近頃寝込みがちで、見舞いに行くと無理にでも起きようとする。主家の者といえど申し訳なくて、奥方にそっと見舞いの品を届けるだけにした。
踵を失った従兄弟は我が子を他家に預る準備に追われている。王家の血を引く男子の慣習で、五歳から十八歳のあいだで五年ほどを他家に預る。
その前に末弟が行くだろう。けれどアルフレッダには、末弟と五年も離れていられる自信はない。