いつから、乳母の添寝がなくなったのか。
夜の暗闇は毎夜、世界を飲み込んで夜という幻を創ると思っていた。
朝陽は暁の騎士がフクロウの瞳から昨日を探し出し、幻を羽根の剣で斬り裂いて今日を広げる。昨日と似ていて違う今日がまたくる。
それが御伽噺だと、いつ知ったのだろう。
カーテンの開けられた窓から陽射と風が吹き込みアルフレッダを起こす。
寝台の横に揃えられた靴を履き、洗面台に向かい、レモン水の満された盥に手を入れると頭も目覚める。気に入りの侍女に選ばせた服を着て、化粧と髪を整える。毎朝悩むのは靴で、色や形や踵の高さを侍女と吟味する。
朝食はずいぶん前から三人だけになった。
「おはようございます、あねうえ」
末弟はまだ舌足らずで、小さな体を忙しなく動かして席につく。彼はいつも庭から来る。
今日一日に何をするのか話し、誘いあい、あるいは渋りながら食事が進む。唯一このときは給仕係を置かないから、言いたい放題。
末弟は音楽が好きで、叩いて鳴らすものなら何でも鳴らすが、それらが曲になるまではまだかかるだろう。
アルフレッダは刺繍に手をかけ、良いものは義妹たちに贈る。涎掛けに刺繍をして何になると弟はいうが、何にもならないからこそ無邪気にできる。害でなければ敵も生まれず、薬となって利用されるよりいい。
「ロブはどう?」
このところ同じ質問をしている。
「未来形が難問だ」
「急かさないわ」
四人の食卓の頃はもっと話すことがあった。一人欠けただけで、世界が半分になった気がする。寂しいというより残念でならない。
ずっと前より今がいいけれど、今より少し前がいい。
夜の暗闇は毎夜、世界を飲み込んで夜という幻を創ると思っていた。
朝陽は暁の騎士がフクロウの瞳から昨日を探し出し、幻を羽根の剣で斬り裂いて今日を広げる。昨日と似ていて違う今日がまたくる。
それが御伽噺だと、いつ知ったのだろう。
カーテンの開けられた窓から陽射と風が吹き込みアルフレッダを起こす。
寝台の横に揃えられた靴を履き、洗面台に向かい、レモン水の満された盥に手を入れると頭も目覚める。気に入りの侍女に選ばせた服を着て、化粧と髪を整える。毎朝悩むのは靴で、色や形や踵の高さを侍女と吟味する。
朝食はずいぶん前から三人だけになった。
「おはようございます、あねうえ」
末弟はまだ舌足らずで、小さな体を忙しなく動かして席につく。彼はいつも庭から来る。
今日一日に何をするのか話し、誘いあい、あるいは渋りながら食事が進む。唯一このときは給仕係を置かないから、言いたい放題。
末弟は音楽が好きで、叩いて鳴らすものなら何でも鳴らすが、それらが曲になるまではまだかかるだろう。
アルフレッダは刺繍に手をかけ、良いものは義妹たちに贈る。涎掛けに刺繍をして何になると弟はいうが、何にもならないからこそ無邪気にできる。害でなければ敵も生まれず、薬となって利用されるよりいい。
「ロブはどう?」
このところ同じ質問をしている。
「未来形が難問だ」
「急かさないわ」
四人の食卓の頃はもっと話すことがあった。一人欠けただけで、世界が半分になった気がする。寂しいというより残念でならない。
ずっと前より今がいいけれど、今より少し前がいい。