「いつまでここにいる気だ?」
「……?」
「カゼひくぜ。帰んな」
「……い……犬だって、カ、カゼくらい、ひく、だろう?」
声が上ずっていた。
しかたがない。犬と話すなんて初めてのことなのだ。
「なんだ勝太。おれにカサ貸してくれてたのか?」
「ど、どう見てもそうだろ?」
「そうだな。ありがとな。じゃぁ、もう帰んな」
犬の目は相変わらずくりくりとして愛らしいものだったが、そこには大人びた優しさを感じた。
「雨の降らないところに行かないのか?」
「どこだよ、雨の降らないとこって」
「軒下とか、おまえだったらそこらへんの物陰にだって隠れられるだろ?」
「だからって雨が止むわけじゃねぇよ。どこにいたって雨は降るもんだ。濡れるか濡れないかだ」
人間だったら濡れないようにするものだが、犬は違うのだろうか?
「イヌってのはな、勝太。
躾ればいうこと聞くだろう? でもな、そりゃ相手にもよるんだよ。従うかどうかは、やっぱりイヌに選択権がある。
ヒトだって、ガキのころは親の言うこと聞いてるだろ? んで、知恵がついて反抗するだろ?
イヌは飼われてるヤツと飼われてないヤツがいるだろ? イヌはな、飼われたくないと思えば逃げちまうものなんだよ。
ヒトだって、ガキのころは親のケツ追いかけてるだろ? んで、でっかくなると家を出るだろ?
飼われてるイヌは出されるものを食べるだろ? まぁ、偏食するやつもいるけどな、食われるもんは食うんだ。
ヒトも出されたものを食べるだろ? 好き嫌いはあるだろうけど、腹が減ればなんでも食うだろ?」
結局な、と犬が言った。
「イヌもヒトも大して変わらねぇんだ」
でもな、と犬が言った。
「イヌとヒトはおんなじもんじゃねぇんだぜ、勝太」
くりくりとした目が勝太を見上げる。好奇心の奥にとてつもないものが潜んでいるような色をしている。
「しゃべりすぎたな。そろそろウチに帰んな」
「お……おまえは、どうするんだ?」
「おれ? おれは今からノラだ」
「ノラ?」
「そう。ノラ犬のゲンタだ。縄張りには気をつけねぇとな」
「どうして今までここにいたんだ?」
「うん? ……あぁ」
くりくりとした目が遠くへ視線を向ける。
「……?」
「カゼひくぜ。帰んな」
「……い……犬だって、カ、カゼくらい、ひく、だろう?」
声が上ずっていた。
しかたがない。犬と話すなんて初めてのことなのだ。
「なんだ勝太。おれにカサ貸してくれてたのか?」
「ど、どう見てもそうだろ?」
「そうだな。ありがとな。じゃぁ、もう帰んな」
犬の目は相変わらずくりくりとして愛らしいものだったが、そこには大人びた優しさを感じた。
「雨の降らないところに行かないのか?」
「どこだよ、雨の降らないとこって」
「軒下とか、おまえだったらそこらへんの物陰にだって隠れられるだろ?」
「だからって雨が止むわけじゃねぇよ。どこにいたって雨は降るもんだ。濡れるか濡れないかだ」
人間だったら濡れないようにするものだが、犬は違うのだろうか?
「イヌってのはな、勝太。
躾ればいうこと聞くだろう? でもな、そりゃ相手にもよるんだよ。従うかどうかは、やっぱりイヌに選択権がある。
ヒトだって、ガキのころは親の言うこと聞いてるだろ? んで、知恵がついて反抗するだろ?
イヌは飼われてるヤツと飼われてないヤツがいるだろ? イヌはな、飼われたくないと思えば逃げちまうものなんだよ。
ヒトだって、ガキのころは親のケツ追いかけてるだろ? んで、でっかくなると家を出るだろ?
飼われてるイヌは出されるものを食べるだろ? まぁ、偏食するやつもいるけどな、食われるもんは食うんだ。
ヒトも出されたものを食べるだろ? 好き嫌いはあるだろうけど、腹が減ればなんでも食うだろ?」
結局な、と犬が言った。
「イヌもヒトも大して変わらねぇんだ」
でもな、と犬が言った。
「イヌとヒトはおんなじもんじゃねぇんだぜ、勝太」
くりくりとした目が勝太を見上げる。好奇心の奥にとてつもないものが潜んでいるような色をしている。
「しゃべりすぎたな。そろそろウチに帰んな」
「お……おまえは、どうするんだ?」
「おれ? おれは今からノラだ」
「ノラ?」
「そう。ノラ犬のゲンタだ。縄張りには気をつけねぇとな」
「どうして今までここにいたんだ?」
「うん? ……あぁ」
くりくりとした目が遠くへ視線を向ける。