「おい、おいって。大丈夫か、にいちゃん?」
声をかけられたような気がする。
「おれはゲンタって言うんだ。にいちゃんは?」
「勝太」
「いい名前だな。図太いって意味だろう?」
図太いは、いい意味だろうか? いろんな意味でいいことなのだろう。
頷きかけて、はたと気づく。
今、誰が話しかけた?
周囲を見回すが人影はない。
雨雲のせいでわからないが、あたりはもう夕暮れを追い越し夜の色だ。
近隣の人たちの通勤、通学の道なので朝夕はそれなりに人通りはあるが、真昼や真夜中はよほどのことがなければ出歩かない。片隅の自動販売機の光が寂しげだ。
「どうしたい? あぁ、首が凝ったんだろ」
こんなところに座り込んでるからだよ、と犬が言った。
犬が。
犬?
いぬが!!
ばしゃん、と地面についた手が音を立てる。傘がポロリと手から離れ、小さな水しぶきをあげて転がった。
「いぬ!?」
「おう。おれはイヌだよ。にいちゃんだってヒトじゃねぇか」
「いぬがしゃべっ……っ」
がはは、と犬が笑った。犬が。
「舌なんか噛みやがって、どんくせぇなぁヒトは」
犬に笑われた。人類初かもしれない。
雨に濡れて生乾きの茶色の毛皮。よく見るとこげ茶のぶち。くりくりと丸い目は好奇心がたくさん詰まっているように輝いて見える。
「なぁ勝太」
犬に呼び捨てされた。人類初かもしれない。
「おめぇ、いつまでここにいる気だ?」
「は?」
「まさか勝太も、拾ってもらおうって魂胆か?」
「こん……?」
やめとけやめとけ、と犬が笑った。
「ヒトがヒトに飼われたって、生産性がない。他種に飼われんのは良いけど、同種に飼われんのは良くねぇな」
何かものすごく哲学的なことをいわれた気がする。犬に。
声をかけられたような気がする。
「おれはゲンタって言うんだ。にいちゃんは?」
「勝太」
「いい名前だな。図太いって意味だろう?」
図太いは、いい意味だろうか? いろんな意味でいいことなのだろう。
頷きかけて、はたと気づく。
今、誰が話しかけた?
周囲を見回すが人影はない。
雨雲のせいでわからないが、あたりはもう夕暮れを追い越し夜の色だ。
近隣の人たちの通勤、通学の道なので朝夕はそれなりに人通りはあるが、真昼や真夜中はよほどのことがなければ出歩かない。片隅の自動販売機の光が寂しげだ。
「どうしたい? あぁ、首が凝ったんだろ」
こんなところに座り込んでるからだよ、と犬が言った。
犬が。
犬?
いぬが!!
ばしゃん、と地面についた手が音を立てる。傘がポロリと手から離れ、小さな水しぶきをあげて転がった。
「いぬ!?」
「おう。おれはイヌだよ。にいちゃんだってヒトじゃねぇか」
「いぬがしゃべっ……っ」
がはは、と犬が笑った。犬が。
「舌なんか噛みやがって、どんくせぇなぁヒトは」
犬に笑われた。人類初かもしれない。
雨に濡れて生乾きの茶色の毛皮。よく見るとこげ茶のぶち。くりくりと丸い目は好奇心がたくさん詰まっているように輝いて見える。
「なぁ勝太」
犬に呼び捨てされた。人類初かもしれない。
「おめぇ、いつまでここにいる気だ?」
「は?」
「まさか勝太も、拾ってもらおうって魂胆か?」
「こん……?」
やめとけやめとけ、と犬が笑った。
「ヒトがヒトに飼われたって、生産性がない。他種に飼われんのは良いけど、同種に飼われんのは良くねぇな」
何かものすごく哲学的なことをいわれた気がする。犬に。