「ダメなんだ」
「……なにが?」
「今年は花が咲いたけど、来年はもう咲かない」
「どうして?」
「受粉機能が解明できなかった」
「………………」

 絶滅した樹木の再生は人気がない。
 そのほとんどの理由が、子孫をどうやって残していたのかが解明できないからだ。一度花を咲かせた、あるいは実がなったとしても、次にはもう枝葉が茂るだけ。

 私は唇をかみ締めた。
 一度という条件なら間に合った。けれど、完全とはいえない。



「……ねぇ。この木の名前、なんていうの?」
「サクラ」
「サクラ?」
「ホラ。風が少しでも吹いたら、花びらが舞うだろう? この儚いことを、昔の人は『サクラ』と言ったそうだよ」
「そう。……きれいね。わたしのため?」
「ん? うん」

 君のため。あなたのため。
 早く散るサクラの花びらのように、彼女の命も散ってしまう。
 白に薄紅の頬。
 襟元から香る薬の匂い。
 やせ細った手足。
 彼女の命は風に吹かれ、早々に散ってしまう。

「あのね」
「ん?」
「ありがとう」
「……うん」
「ずっとね」
「ん?」
「毎日、見てたの」
「うん」
「あなたのね、背中」
「…………」