白に、ほんのりと紅色。色白の少女の頬のように柔らかな色。
 ほんのりと苦味を帯びた匂いは葉から。
 しっかりとした根。しなやかに天に伸びる枝たち。

 その日それは甦った。

 彼女は熱で潤んだ目を大きく見開き、うっとりと魅入った。
「きれい……」
 つぶやきは呼吸のように自然に零れる。



 縁側で、彼女をひざに乗せて庭を眺めた。
 芝生は改良物ではなく、実験の途中で見つけた原種。そのなかに若い女王が一本、立ち上がっている。

「気に入った?」
「えぇ。とても」
「よかった」
 間に合って。
「発表は、いつ?」
「発表はしない」
「……どうして?」
「最初からそのつもりだった。君にだけ、見せたかったんだ」
 この木の苗を庭に植えた頃、とある研究所から共同の申し入れがあった。断った。
 これは私一人で成すべきもので、彼女の視線の届かないところで誕生させるわけにはいかなかった。第一、ほとんど終わりに近いものにたいして共同など、とんびが横からさらおうとするのと同じだ。

 そう、と彼女は顔を曇らせた。
「どうした?」
「キレイなのに、もったいない」
「………………」
「もっとたくさんあって、もっとたくさんの人に見てもらいたいわ」
 私は唇をかみ締めた。