「そんなに良かったの?」
家に帰ると、なぜか人妻となった従妹がいた。
「家を間違っているよ、従妹殿」
「いいじゃない。我が家に里帰りよ」
二日目で? 里帰り? 里が違うだろうに。
「何が良かったんだって?」
「陛下よ?」
「陛下は相変わらずすばらしい方だ」
「あなたが陛下バカだってことはわかってるわ。そうじゃなくて、初陣はどうだったの?」
「初陣?」
イルスが考えたのは数秒だった。思い出して胃が痛んだ。
「あ……あれは違う! 誰かのいたずらだ!」
すっかり忘れていた。主のお召しなど、いったい誰がイルスを嵌めたのか。
「なぁんだ」
従妹は心底がっかりしたようだ。人の不幸をそれほどまでに期待していたのか彼女は!
「それを聞くために来たんじゃないだろうな」
「もちろん、聞くためよ。ほかに何の用があるっていうの?」
こんな女だ。こういう性格なのだ。今も昔もきっとこれからも。
イルスは震えるこぶしを握り締めた。
もっと優しく清楚で、心豊かな女性はいないものだろうか。
イルスは切に願った。
そして見合い写真の顔が一様に似た顔になる頃。
今回の留学生のなかに、学生以外のものが混じっていた。ただの留学ではなく、実習のためにくることはイルスも聞いていた。
(それにしても若すぎないか)
周りからは自分も若造呼ばわりされることは棚に上げ、イルスは書類を見つめて唸る。
十八歳。北の国ではちょうど成人にあたるらしい。
身元は充分すぎるほどで、それからすると確かに彼女は適任だった。
妾腹の出とはいえ彼女は、北国の王の妹にあたる。すでに母親は亡く、ほかに身寄りのない彼女を王は身近に引き寄せ、先日の成人の儀の際にこの留学を命じたらしい。
───というのが魔導士ハッサムからの情報だった。さすがというか恐ろしい。
末席とはいえ王族の一人なので、宰相補佐のイルスが面倒を見ることになった。面倒を見るのはかまわないが、自分の従妹のような性格だったら事後でもお断りしたいと思う。
心の平穏のために。
家に帰ると、なぜか人妻となった従妹がいた。
「家を間違っているよ、従妹殿」
「いいじゃない。我が家に里帰りよ」
二日目で? 里帰り? 里が違うだろうに。
「何が良かったんだって?」
「陛下よ?」
「陛下は相変わらずすばらしい方だ」
「あなたが陛下バカだってことはわかってるわ。そうじゃなくて、初陣はどうだったの?」
「初陣?」
イルスが考えたのは数秒だった。思い出して胃が痛んだ。
「あ……あれは違う! 誰かのいたずらだ!」
すっかり忘れていた。主のお召しなど、いったい誰がイルスを嵌めたのか。
「なぁんだ」
従妹は心底がっかりしたようだ。人の不幸をそれほどまでに期待していたのか彼女は!
「それを聞くために来たんじゃないだろうな」
「もちろん、聞くためよ。ほかに何の用があるっていうの?」
こんな女だ。こういう性格なのだ。今も昔もきっとこれからも。
イルスは震えるこぶしを握り締めた。
もっと優しく清楚で、心豊かな女性はいないものだろうか。
イルスは切に願った。
そして見合い写真の顔が一様に似た顔になる頃。
今回の留学生のなかに、学生以外のものが混じっていた。ただの留学ではなく、実習のためにくることはイルスも聞いていた。
(それにしても若すぎないか)
周りからは自分も若造呼ばわりされることは棚に上げ、イルスは書類を見つめて唸る。
十八歳。北の国ではちょうど成人にあたるらしい。
身元は充分すぎるほどで、それからすると確かに彼女は適任だった。
妾腹の出とはいえ彼女は、北国の王の妹にあたる。すでに母親は亡く、ほかに身寄りのない彼女を王は身近に引き寄せ、先日の成人の儀の際にこの留学を命じたらしい。
───というのが魔導士ハッサムからの情報だった。さすがというか恐ろしい。
末席とはいえ王族の一人なので、宰相補佐のイルスが面倒を見ることになった。面倒を見るのはかまわないが、自分の従妹のような性格だったら事後でもお断りしたいと思う。
心の平穏のために。