「……侍医を!」
「いらん。俺はいい。フレッダのもとに急げ」
「バカな! 早く侍医を呼べ!」
 慌ただしく衛兵が駆けていく。

 アルフレッドは立ち上がり、男を座らせようと腕を掴んだ。男はその腕を掴み返す。
「コリィ」
「…………」
「もう、いいな?」
 何が、とはアルフレッドは訊き返せなかった。
 訊き返す勇気はまだなかった。

 嫌だといえば、まだ許してくれるのだろうか。

 九歳になる少し前に戦場に立った。その後ろにはこの男がいた。
 泣いても叫んでも戦場に立たされた。寝込むような怪我はひとつも負わなかった。

 九歳の誕生日に王座に座った。その後ろにはこの男がいた。
 兄よりも年上の男たちにかしずかれ、忠誠を誓われた。受け取りたくなかった。

 十歳のときに初めて弟に会った。その後ろにはこの男がいた。
 あまりの小ささに驚いた。おまえもそうだったと男が微笑んだ。

 十一歳のときに西の大国と不可侵条約を結んだ。その後ろにはこの男がいた。
 難しい言葉はわからなかった。あとでひとつひとつ男が説明した。

 十二歳のときに信頼していた叔父の裏切りを知った。その後ろにはこの男がいた。
 あまりのことに言葉も出なかった。倒れないように背中を支えてくれる手は男のものだった。

 十三歳のときに妻になる少女に会った。その後ろにはこの男がいた。
 緊張して一言も話せないでいた。二人して黙り込んだ姿を腹を抱えて大笑いされた。

 十四歳のときに側室を娶った。その後ろにはこの男がいた。
 するべきことはわかっていた。緊張しているのはお互い様だと教えてくれた。

 十五歳のときに正室を娶った。その後ろにはこの男がいた。
 豪華な衣装に緊張した。騎士の盛装をした男は辟易していた。

 十六歳のときに父親になった。その後ろにはこの男がいた。
 赤ん坊は柔らかく、温かかった。だから守れと、言われた。

 来年の夏、アルフレッドは十七歳になる。
 その後ろにはこの男がいてくれるだろうか。

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