子どもが産まれた。
 双子の女だった。
 少し安心した。最初の男子は、やはり正室のほうがよいと言われていたのだ。……あの男に。

 アルフレッドの血族には双子が産まれやすい。髪は黒、瞳は薄い青。
 目はまだ開いていないし、髪は薄すぎて黒なのか茶色なのか金なのかわからない。何より猿の子のようで、アルフレッドは我が子かどうか判断できなかった。
 産婆はアルフレッドによく似ているという。慣れた者がそう言うのだから、父親似の娘なのだろう。

 十日して、両親と産婆以外の者も面会が許された。
 誰もが祝いと祝福の言葉を、まだ聞いているのかもわからない赤ん坊に言う。

「かわいいわね」
 姉は我がことのように喜んだ。しきりに母親を誉め、労った。
 正室も最初は遠慮していたが、やはり好奇心が勝ったのか、危ない手つきで抱きかかえた。骨と皮だけの少女が、一瞬、女の顔になる。

「次はあなたね」
 姉の言葉に正室は頬を染めてうなずいた。



 花園の叔父夫婦に手紙で、無事に子どもが産まれたことを知らせた。
 字が乱れていた。案外アルフレッド自身も、喜んでいるのだろうか。

 まだ自分自身が子どもであることを知っているものだから、子どもが子どもを作ることが不思議に思えた。跡取りが必要なのはわかるが、まだ早い気もした。
 父親だと言われても、どうすればいいのか、本当はわかっていない。産婆に言われるまま抱き上げ、司祭に促されて名付けた。世話をする乳母や侍女はすでにいて、アルフレッドがそれ以上することはなかった。

 アルフレッドはまだ子どもなのだ。今からいったい、どれだけ時間の余裕があると思っているのだろうか。
 誰もが、少年のうちに死んでしまった長男の二の舞を恐れているのかもしれない。

 人はいつだって、余分なものを持たなければ安心できない。
 今持っているものがいつなくなるのかわからないから、いつなくしてもよいように、もうひとつ持っていたいと思ってしまう。
 あればあるだけ欲しくなる。

 老王の気持ちもわからないでもない。誰かが自分より多く持っていると、自分はもっと欲しいと思ってしまう。
 人は、なかなか安心できない生き物だ。


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