西には大国がある。
 アルフレッドの国よりも少しばかり小さいことを気にする神経質な老王。その使者が来た。
 両国の間には古くからある王族が三国に分かれて治めており、二大大国の火花に水をかけつづけている。
 先の大戦で領土が最初の二倍になったとき、アルフレッドは三国の主家に仲介役を頼み、西の大国と和平を結んだ。西の老王はそれすら気に入らなかったが、しぶしぶ承諾した。

 西よりの使者は、老王の息子を留学させたいと言ってきた。アルフレッドは承諾した。
「ただし、使者殿。こちらからも条件をだしてもよいだろうか?」
「賢明王の願いであれば、多少の無理など跳ね飛ばしましょうぞ」
「近々、わたしの子が生まれる。そしてわたしの弟は幼い。さらに当国には現在、今は亡き南国の王子がいる」
「存じております」
「何かと子どもは手のかかるものだ。わたしの知るかぎりで、養育を任せられる者も少ない。
 そこで、当国には統治下国がある。そのひとつに、王子は預けることを条件としたい」

使者はしばらく思案し、帰国して王に指示を仰ぎたいと言って帰った。



 アルフレッドの国の属国は二つある。
 ひとつは東の端の細長い国で、先の大戦で無条件降伏した。
 もうひとつは南西にあり、兄弟国と冷戦状態にある。
 どちらに預けてもまずよいことはないだろう。アルフレッドならまず詫びと断りの使者を送る。
 三男であろうとかわいい我が子だ。かわいくないというならともかく、密偵の不可能な地に追いやられては無駄足になる。



「どうだった?」
 西の大国からはひと月もして使者が再来した。
 老王の直筆は大きな字で震えていて読みにくい。息子は貴国にじかに預けられる歳になるまで延期したいとの旨だった。

 アルフレッドは舌打ちしたい気分だった。
 断るための口実は、この男が考えたのだ。
「臆病なジジイめ」
「歳をとると用心深くなる」
 アルフレッドは口と臍を曲げた。


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