ふと気づくと、静かに佇む人がいた。
 窓辺に立つその人の背筋はまっすぐで、緊張ではないもので空気がピンと張っている。
 少し長めの黒髪が風に揺れる。

 りん、と音がなる。
 イルスの上着のすそにつけられた鈴。
 気づいて、主は振り返った。

「……………………………………」
「……………………………………」
 恐ろしく長く見つめあう。
 温度が一度は上がっただろう。
「……………………………………」
「……………………………………」
「何用だ?」

 何ですと?

「部屋を間違ったのか?」
「お、お呼びに、なったのではないのです、か?」
「いいや。わたしは呼んではいない」
「……………………………………」
「……………………………………」

 何てことだ。
 どうしたことだろう。
 どうすればいいのだろう?

「イルス」
「は、はい」
「仮装パーティーか?」
 きっと言ってくださると思いました。
「違います」
 ここぞとばかりにイルスはきっぱりと否定した。

 それにしても、どこをどう間違ったのだろう? 誰が主のお召しを伝えてきたのだろうか? そして仮装したイルスはどうすればよいのだろうか?

 二人はただ無意味に見つめあった。


Novel 一覧