叔父の妻の具合が悪いとは聞いていた。だが、面会を断られるほどとは思っていなかった。
「いいえ、陛下、ただの風邪です。たちの悪い風邪なのです。あなたに移すわけにはいかない」
そう言って、王族のために創られた公爵家の主は優しく笑った。その笑みに深刻さはなく、アルフレッドは信じた。
叔父は数少ない血族で、またそうでなくともアルフレッドはこの叔父に好意を持つだろう。そんな人だ。
公爵家の庭も見事なものだ。姉の屋敷の庭は薔薇が我が物顔で咲いているが、ここは色とりどり、大小さまざまな花が咲き乱れている。
王宮から南東の位置にある、豊かで広い田舎。
ただ王族の血を残すためだけの家だから権力は要らない。亡き父王の末弟にあたり、華やかな場所を好まない人だから収まることができた席。
「遠路はるばる、見舞いにきていただいたのに」
「気にしないでください、叔父上。名目は査察です」
「先日も、風見鶏の騎士殿が来られました。見舞いにと、小さな薔薇の苗をいただきまして」
風見鶏の騎士。
人々があの男に冠したふたつ名。
屋根の上に取り付けられた木でできた鶏が風を読んでその方向を知らせるように、勝利を嗅ぎ取って人々を導く。
あの男は戦場では優秀な指揮官だった。たとえ、盛装と敬語と格式と石頭が嫌いでも、人々にとっては英雄。
忠誠は姫にあり、王には勝利を。
「不思議な男ですね。忠実ではないけど、誠実です」
アルフレッドは首をかしげた。あの男は忠実でも誠実でもない。
「確かに問題はありますが、言っていることはもっとなことばかりです。怪しげな男だという者もいますが、わたしは信じられると思いますよ」
争い事には縁のない叔父はそう言って、不服な顔をする甥に向けて苦笑した。
だから、と言葉が続く。
「あなたは今、賢明なる王でいる」
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