やはりこういったことに対処するには年の功だと、イルスは思う。
 恥をしのんで相談すると、爺は開口したまま細目を目いっぱい開いた。こんな反応がほしかった!
 手をとられ、薬臭い口が近づく。その目は濡れていた。
「若……」
「爺!」
「よくぞここまでご立派になられました!」
 なんだと?
「ご安心を、若。今は亡き先帝は後宮に女、手元に男と使い分けておられました」
 そんなことは訊いていない。
「城は改築を重ねながらも大切な部分は残っており、陛下のお部屋近くに専属の部屋がございます!」
 何だそれは。
「あぁ! 爺は涙が止まりませぬ!」
 枯れ果ててしまえ。

 訊く相手を間違えた。

 年の功でも奥向きのことは女だ。
 際限まで痩せた女官長は、イルスの話を聞くなり、口を硬く引き結び、馳せるような眼差しで沈黙した。
 イルスはいつものように、歳をとると痩せるものかと考えていた。爺も女官長も宰相も細身だ。だが太鼓腹で有名な大臣が痩せた姿は想像できそうにない。
「承知いたしました」
 さすが奥向きの達人。
「準備はわたくしにお任せを」
 人選ミス。
 誰だ人事責任者は。



 その日の昼飯を騎士長とつついた。
 彼は深く同情してくれた。修羅場のときは助けにはいることを約束してくれた。できることなら、当事者にならないように助けてほしい。

 誰も彼もイルスを助けるどころか、主の玩具が見つかったことを喜んだ。
 さすがは誉れ高き主。
 素晴らしき治績保持者。

 人生は孤独だ。


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