「陛下はなぜ、ご結婚なされないのですか?」
 なんとか宰相の力になろうと、イルスはまずは根本的なところから始めることにした。
 美女を掻き集めても無駄なことはすでに学習済で、人によっては変った者を好むことくらい知っている。この際、例えどんな醜女で性悪女だろうと、主の好みなら宰相も文句はいえないだろう。

 主は少しだけ思案の顔をし、小さくかぶりを振った。
「誰も娶る気はない」
「なぜでしょうか?」
「子種があるかもわからない男に、嫁がせるのは不憫だ」
「……!」
 愕然とした。
「お、恐ながら……」
 おもわず周囲を見回して、開けられたままの扉や窓の外に誰もいないか確認する。お茶の時間、主はイルス以外の同席を許していないのが幸いした。

 震える手から茶器を放し、
「陛下、それ、は……?」
「機が悪かっただけかもしれん。それでも六年待ったが、さすがに不憫で里に帰した」
 普段は石のように無表情な顔が、痛みを堪えて震えた。



 イルスは自分の心一つに止めておくことはできず、宰相に相談した。
 唸った宰相は視線をそらし、さすがに重々しい表情で沈黙した。
「しかし……それでも、可能性はなくはない!」
 この熱意を止めることができるものはいるだろうか。

 翌日も見合い写真が山と積まれた。


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