その日は見事に快晴でした。

 わたしが乗り込んだ駅ではまだ人が少なく、座ることができました。いつものように前のほうに座りました。
 しだいに人が乗り込み、車中は緩いくらいの満員でしたが、まだ周りを見ることができるくらいには空いていました。

 ふと、前に立った学生さんの腰の低さ、足の短さに気づきました。最近の子はお尻が大きくなって短足になっているというのはマジなんだと感心しました。
 そういえば、女子高生の短いスカートの裾は丸いお尻で盛り上がり、まるでカルガモの尻尾のようだったと、微笑ましく思いました。彼女たちは縦列でなく横列で歩きますが。

 なんてことを考えながら首をめぐらせたときです。
 彼に出会ったのは。

 彼も学生さんでした。白いシャツにモノクロのズボン、革靴、カバン。制服は夏服です。薄い色、軽い生地。いつか彼も足が短くなるのでしょうか。
 暑いさなかどこに行くんだろうと、自分のことは棚において思いました。

 そのときです。
 大変なことに気づきました。

 きっちり閉められた社会の窓。
 しかし、その上。
 窓の鍵が開いていたのです!

 なんてことでしょう!!

 しかもベルトに引っかかり、半分めくれているのです。

 なんてこったい!!

 さらには本人は気づいていないのです。

 あいたたたぁ!!

 教えてあげるべきか。いや、公衆の面前で大声で言うべきことではない。だからといって立ち上がりそばに歩み寄り耳元にそっとささやくと変態さんのようだ。絶対怪しい。
 私は苦悶しました。

 青少年の明るい未来のために叫ぶべきか。
 青少年のプライド保守に努めるべきか。

 教えなければ誰かが気づく。誰もが気づく。さらし者。
 教えれば誰もが気づく。さらし者。
 傷を負うことに変わりはないか……。

 悶々と考えていると、あぁなんてことでしょう、彼は降りていってしまいました。
 しかたない。これも運命。
 縁のうち。

 青少年よ、大志を抱け。