
『海峡の光』
(かいきょうのひかり)
辻 仁成
新潮社 (2000.3)
内容:(紹介文より)
廃航せまる青函連絡船の客室係を辞め、函館で刑務所看守の職を得た私の前に、あいつは現れた。少年の日、優等生の仮面の下で、残酷に私を苦しめ続けたあいつが。傷害罪で銀行員の将来を棒にふった受刑者となって。
そして今、監視する私と監視されるあいつは、船舶訓練の実習に出るところだ。光を食べて黒々とうねる、生命のような海へ……。
海峡に揺らめく人生の暗流。
芥川賞受賞。
感想
表紙を見て、すわ人面疽かと手にとれば、二面性。
船越桂さん、申し訳ありません。ごめんなさい。ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。
本書との出会いはいつなのか。もう三・四年は経つと思います。
手にとってから、ひと月と少しという長い時間をかけて大切に読みました。ページ数からすると非常にゆっくりです。
読み終ってふと、起承転結はどこだったかなぁ、と考えました。あるにはあるんですが、すべての謎、小さな話のうちのいくつかの顛末は見あたらないんです。
ただ淡々と進んで行き、まるで途中で切上げられた夢のようでした。
とても静かな文体で、「私」が語り部のように呟き、同時に当事者として綴られています。厚い淡色の和紙にパステルカラーで描かれた水彩画を彷彿とさせます。
しかしただ単調というわけではなく、主人公「私」が感じるフツフツと蘇る怒り、ふと思いだす後悔、じょじょに高まる興奮には知らず引寄せられました。
気付くと、似た光景、同じ感情を思い出させられましたよ。
もう、悔しいですね。
2005.07.16-21