フェンネル大陸偽王伝 孤狼と月

『フェンネル大陸偽王伝 孤狼と月』
(ふぇんねるたいりくぎおうでん ころうとつき)

高里 椎奈
講談社 (2004.5)

挿絵:ミギー

内容:(紹介文より)
 大陸の東端に位置するストライフ王国。
 幼くして指揮官に就いたフェンベルクは、悪鬼を従える獣兵師団を率いて外敵を打ち払い、順調に戦果を上げていた。しかし不意に舞い込んだ凶報が、次第に彼女を奈落の底へと導いて行く。投獄、国外追放、失意の果てに見た現実とは……。
 夜明けを目指す、王道ファンタジー第一弾!

感想
 高里さんといえば薬屋シリーズ。
 もちろんわたしも手にしました。が、なんと一巻目でリタイア! 以後、書棚の肥しのまま手放さず読まずの生殺しです。
 面白そうだけど手につかない、てのは珍しい。読むには躊躇ったものの、気になったのでなかなか手放せないでいるのですよ。……うん? ループしてるね。エンドレスに。

 で、数年して出会った本書。パラパラと捲って目についた単語。
 「竹」
 これならいける!
 何がどうイケるのか自分でもよくわかりませんでしたが、そのときはもう大丈夫だと思いました。ホント、深い意味はないです。

 ミステリとは一歩離れたファンタジーです。
 まだ幼さの目立つ少女フェンベルクが主人公。
 若くして指揮官に就きながらも、戦場で悪鬼(グール)を率いるために、周囲からは疎まれます。でも、なんのその。自ら見張りにつき、悪鬼と目線を合わせ、彼らの食糧を配慮し、前線に立ちます。
 口調も考えも非常に大人びていて、年齢を知った時は驚きました。よほど特殊な教育なり生活環境下で育ったんだろうなぁ、と。じきにその理由は見えてきます。
 どんな立場の人間であるのかはほとんど隠されません。微妙な立場にあることも薄々と読み取れます。

 事件、困惑、絶望、惰性、苦痛……そこへ射す、細く頼りない光と次々に溢れる現実。
 どんなに大人びていても、結局は井の中の蛙でしかない少女。また、そこから見えてくる真実に打ちのめされながらも吸収していく――それが彼女の本当の強さかもしれません。

 全体を見るに、すべてが語られるわけではなく、フェンベルクの冒険の足掛かりとなる部分が中心となっています。その他の謎や気になる部分はきれいさっぱり解決しません。
 なので、これ一冊読んでもきっとスッキリはしないです。序章とか第一章とか思って読むべきかと。
 さらにいうと、ファンタジーにしてはリアルも混ざっていて、身近な言葉で表現されていて良いと取るか、さっぱり入り込めないイヤだわん、と思うか賛否両論あるでしょう。


2005.07.14-15