
『神を見た兵隊 ガダルカナル兵隊戦記』
posted with 簡単リンクくんat 2005. 6.28
牛尾 節夫
光人社 (1982.7)
(かみをみたへいたい がだるかなるへいたいせんき)
感想
孫たちの時代に。ふたたびこの轍を履まぬために――そんな贈り言葉で始まった一兵士の物語。
著者の祖父は、明治維新前に似たような体験があるそうです。代々そんなことがあるとすれば、次は孫にあたる。そんなことにならないようにと、本書は願いが込められています。
本書は、入隊から帰還までの体験を、涙と笑い、感動と怒りのままに書かれています。
昭和十五年八月一日に入隊した百余名のなかに、著者・牛尾節夫氏がいました。
厳しい生活のなかでの同期の仲間との交流、軍隊特有の言い回しなど、まだこの時は感心してうなずくことばかり。もちろん、私自身が兵役経験がないため、素直に珍しいと思いました。
昭和十七年・秋、ラバウル港到着。数日後ガダルカナル島へ赴くことになりますが、帰還までの百十一日間、予想だにしない戦いを強いられることになります。
敵は米軍だけではありません。餓え、病、原住民。味方であるはずなのに四ヶ月の差で十年下の古兵に使われ、弱りきった者に命令を強要する上官。飯炊き、洗濯、設営、食糧探し……。
大勢で大きなトカゲを捕まえ、こわごわと口にして意外にも美味しかったこと。味見をしたものが数日後に亡くなったこと。輸送に失敗して海に浮かぶ食料を、指をくわえて眺めなければならなかった。
次第に戦況が傾くと、日に二度の炊事以外やることがなくなり、主に昼寝をして日々が過ぎる。
考えることは故郷に帰ること、家族のこと。罵られても、子どもたちの写真は手放せませんでした。
何度も引き揚げに失敗し、病を抱え、飢餓に襲われ、故郷を思い、上からの重圧に耐え――不思議なことに、この気の狂いそうな百余日間、氏は何度も感動します。
病に弱った自分を見捨てず、励まし歩んだ戦友。
三度も偶然に出会い、食糧の礼にと薬をくれ、恩返しができて晴々とした顔の名も知らぬ隊員。
産卵のために大量発生した蟹に言い表せないものを感じ、胸打たれ。
真っ白で目立つ褌の干し方に四苦八苦。
椰子の実の水はいつ、どれが一番旨く、さしみや林檎に似た部分があることを発見。
海を見て、故郷と繋っていることに安堵。
さらには、海に向かって打たれた弾丸が水面から飛び出して来るのが小魚に見え。
爆弾で巻上げられた海水を「華麗きわまる水の芸術品」と表す。
極限状態にあって、美しいもの、特に自分たちを取囲む自然を記憶しているのに驚きました。ある本で、重要任務についた男も自然が如何であったか記していたのを覚えています。
二人には何か共通点があるように思います。
時代も任務も違う二人には何があったのか。
恐らく、周囲を見るという無意識の冷静ではないでしょうか。
2005.06.11-24
posted with 簡単リンクくんat 2005. 6.28
牛尾 節夫
光人社 (1982.7)
(かみをみたへいたい がだるかなるへいたいせんき)
感想
孫たちの時代に。ふたたびこの轍を履まぬために――そんな贈り言葉で始まった一兵士の物語。
著者の祖父は、明治維新前に似たような体験があるそうです。代々そんなことがあるとすれば、次は孫にあたる。そんなことにならないようにと、本書は願いが込められています。
本書は、入隊から帰還までの体験を、涙と笑い、感動と怒りのままに書かれています。
昭和十五年八月一日に入隊した百余名のなかに、著者・牛尾節夫氏がいました。
厳しい生活のなかでの同期の仲間との交流、軍隊特有の言い回しなど、まだこの時は感心してうなずくことばかり。もちろん、私自身が兵役経験がないため、素直に珍しいと思いました。
昭和十七年・秋、ラバウル港到着。数日後ガダルカナル島へ赴くことになりますが、帰還までの百十一日間、予想だにしない戦いを強いられることになります。
敵は米軍だけではありません。餓え、病、原住民。味方であるはずなのに四ヶ月の差で十年下の古兵に使われ、弱りきった者に命令を強要する上官。飯炊き、洗濯、設営、食糧探し……。
大勢で大きなトカゲを捕まえ、こわごわと口にして意外にも美味しかったこと。味見をしたものが数日後に亡くなったこと。輸送に失敗して海に浮かぶ食料を、指をくわえて眺めなければならなかった。
次第に戦況が傾くと、日に二度の炊事以外やることがなくなり、主に昼寝をして日々が過ぎる。
考えることは故郷に帰ること、家族のこと。罵られても、子どもたちの写真は手放せませんでした。
何度も引き揚げに失敗し、病を抱え、飢餓に襲われ、故郷を思い、上からの重圧に耐え――不思議なことに、この気の狂いそうな百余日間、氏は何度も感動します。
病に弱った自分を見捨てず、励まし歩んだ戦友。
三度も偶然に出会い、食糧の礼にと薬をくれ、恩返しができて晴々とした顔の名も知らぬ隊員。
産卵のために大量発生した蟹に言い表せないものを感じ、胸打たれ。
真っ白で目立つ褌の干し方に四苦八苦。
椰子の実の水はいつ、どれが一番旨く、さしみや林檎に似た部分があることを発見。
海を見て、故郷と繋っていることに安堵。
さらには、海に向かって打たれた弾丸が水面から飛び出して来るのが小魚に見え。
爆弾で巻上げられた海水を「華麗きわまる水の芸術品」と表す。
極限状態にあって、美しいもの、特に自分たちを取囲む自然を記憶しているのに驚きました。ある本で、重要任務についた男も自然が如何であったか記していたのを覚えています。
二人には何か共通点があるように思います。
時代も任務も違う二人には何があったのか。
恐らく、周囲を見るという無意識の冷静ではないでしょうか。
2005.06.11-24