「てるぅ~!」

 ビクぅッ!

 条件反射だった。
 ヤツの声を聞いただけで、ヤツに呼ばれたというだけで何ゆえ俺はこんなにビクつかなきゃならんのだ。まったく。

「テル待ってー!」
「待てるかバーカ! ついて来るな!」
「待ってー!」
「い・や・だー!」
「あ! ジュンさーん、テル捕まえて!」

 ごすっ

 見惚れるほど太い腕がテルの首に食い込んだ。
 一瞬、懐かしい祖母ちゃんと再会したような気がする。おいでおいでなんてしないでくれ、祖母ちゃん。

 気がつくとニコがそばに座り込んでいた。
 ジュンさんはもういない。颯爽としすぎです。心配してください先輩。

「はい」
 なにやら差し出される。
「……な、なんだよ」
「あげる」
「いらねー」
「ダメだよー」
「いらねーっつってんだろー」
「タダ君からあずかったんだよ」
「うっ!」

 先輩からの贈物を受け取るか。
 配達員のニコから逃げるか。
 究極の洗濯……いや、選択!

「………………………………」
「はい」
 無理やり手をこじ開けて握らされる。
 握りつぶしていいですかタダさん!? それとも去っていくニコに投げつけようか! いやいや、報告されたら後が恐ろしい。

 観念して小さな紙袋を開けてみる。
 ふんわりと甘い匂い。
 カトリーヌ?
 マドリード?
 いや、マドレーヌだ。

「なんだ。菓子か」
 そういえば、タダさんの趣味はお菓子作りだったような気がする。たくさん作ったときはよく配っていたような気もする。
「なんだ……。なぁんだ…………」
 なんだか、疑い深くなってしまった自分に反省。

 マドレーヌは究極に甘かった。
 美味かったけど。


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