「罰を受けないとならないなら来ない」
「罰はしないわ」
「他人の敷地だしな」
「わたしが許すわ」
「怪しげな人間をいれてもいいのか?」
「あ……う…………」
 怪しげなんかじゃない、と言いたいけれど、他人の敷地に無断で入り込んで昼寝をする人間は充分に警戒していい。

「表から来て。わたしが招待したことにすればいいわ」
「ほかのヤツには会いたくない」
「どうして?」
「融通が利かないから」
「みんなはそんなに頭がかたいの?」
「たいていの大人はな」

 どうにか約束をつけようと頭を悩ませるアルフレッダを見て、青年は笑い声を上げた。
「笑うなんて、ヒドイわ。……どうしたら、また来てくれる?」
 青年がくびをかしげる。
「なにかほしいの?」
「んー……」
 青年が上を見上げた。
「この木、切らないでいてくれたら、また来てもいい」
 その木は青年が外から伝ってきたというくらい背が高く、アルフレッダは危ないから切るといった。
「それだけ?」
 青年がうなずく。
「それだけ」
「いいわ。木は切らない」
「ありがとう」
 素直に感謝されて、くすぐったい気持ちになる。約束のためなのだから感謝することはないのにと思いながらも嬉しかった。

 青年が木の枝に手をかけた。
「じゃぁな」
 なーん
 肩に乗った黒猫が鳴く。
「うん」
「もう泣くなよ」
「……どうして?」
「前が見えなくなる」
「?」
「欲しいものがあるなら、目を離すな」
 抽象的な言葉の意味はよくわからなかった。けれどとてもよい言葉だと思った。
「もう泣かないわ」
 アルフレッダは笑って青年を見送った。



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