「夏だ!」
「海だ!」
「スイカだ!」
「浮き輪だ!」
「水着だ!」
「ビキニビキニ!」

 マツさんとタダさんが浮かれている。
 もう夏か。

「うるっさいわねアンタたち! よそ行きなさい!」
 暑いの嫌いなカヤさんが叫び返す。
 襟元から溢れそうな胸元にも大量の汗。きっとそれを取り除けば暑さが半減しますよ、なんて失言は言わない。

「なぁに言ってんだカヤピー」
「海だぞ、海ぃ。泳ぎに行くぞー」
「バッカじゃない。海に泳ぎに行くんじゃなくて女釣りに行くんでしょ」
「オレの次くらいにいい男捜してやるから」
「あんたの次なんてそうそういないわよ」
「わかったわかった。カキ氷とフランクフルト奢ってやるから」
「やめてよ。太っちゃうじゃない!」
「浮き輪の空気入れてやるって」
「どうせ空気入れでやるんでしょ?」
「オイル塗ってやるから」
「あたしの美肌に触ろうなんて百億年早いわっ」

 毎年恒例。誰も気にしない。
 ……と思ったら、今年は違った。

 カヤさんの最初の一声でソファの影に隠れた生き物が一匹。
 その隣にわくわく顔のニコがいる。きっと新しい遊びだと思っているんだろう。

 顔を真っ青にしたテルと目が合う。
「……………………………………………………」
 何か訴えられた。
 わからん。
 いや、あれか?

 去年、入りたてだったテルは、暑さに切れたカヤさんの最初の餌食になった。
『汗かくくらいなら暴れてやる!!』
 そういって新人の腕をぐわしとつかみ、道場で猛稽古を三時間。屍を見に行くと、見事にミイラ化していた。

 今年は誰が餌食になるんだろう。

「テル! ミヤっち!」
「ぎゃ――――――!」
「おかーさ―――――ん!」
 カヤさんが下っ端たちを追い駆けだす。


 もう夏か。

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