こんなに失礼な人間にあったのは初めてで、動揺した。悔しかった。きっとアルフレッダが誰なのか知らないから、こんな無礼なことができるし言えるのだ。
「なにをしているの?」
「は?」
「ひざをおりなさい。無礼でしょう?」
「……何が?」
いきなり振り返って言ったものだから、青年は愚鈍な答えをした。顔がきれいなばかりで役立たずなのかもしれない。
アルフレッダは高貴な人として鷹揚にうなずいてみせ、寛大な気持ちを努めて持つように心がけた。実を言うと「寛大な気持ち」がどんなものなのかは知らないが。
「とにかく、ひざを……」
青年は膝をついている。だから視線が近いのだ。
「顔をあげてはいけないのよ」
「話すときは顔を見て話せと教わらなかったのか?」
「お……教わったわ」
「膝をついても目上の者を見下ろす場合は五歩後ろに下がり、話すことを許されたときにだけ顔をあげること、だろ?」
なぜそんなことを知っているのだろう。
「おまえはだれなの?」
「一般人」
「どうしてそんなことを知っているの? わたしだってこのまえ教わったのよ」
「歳を考えてみろ。おまえの歳で教わったなら、俺はずいぶん前に知ったことにもなる」
なんだか納得いかないが、そうなのかもしれない、とアルフレッダは思った。青年は兄より年上だ。
「それで、あとは?」
「いいわ。そのままよ」
アルフレッダは必要もないのにワンピースのしわを伸ばし、手にしたままだった帽子をかぶる。咳払いの音を声で真似て見せる。
「わたくしは……」
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「なにをしているの?」
「は?」
「ひざをおりなさい。無礼でしょう?」
「……何が?」
いきなり振り返って言ったものだから、青年は愚鈍な答えをした。顔がきれいなばかりで役立たずなのかもしれない。
アルフレッダは高貴な人として鷹揚にうなずいてみせ、寛大な気持ちを努めて持つように心がけた。実を言うと「寛大な気持ち」がどんなものなのかは知らないが。
「とにかく、ひざを……」
青年は膝をついている。だから視線が近いのだ。
「顔をあげてはいけないのよ」
「話すときは顔を見て話せと教わらなかったのか?」
「お……教わったわ」
「膝をついても目上の者を見下ろす場合は五歩後ろに下がり、話すことを許されたときにだけ顔をあげること、だろ?」
なぜそんなことを知っているのだろう。
「おまえはだれなの?」
「一般人」
「どうしてそんなことを知っているの? わたしだってこのまえ教わったのよ」
「歳を考えてみろ。おまえの歳で教わったなら、俺はずいぶん前に知ったことにもなる」
なんだか納得いかないが、そうなのかもしれない、とアルフレッダは思った。青年は兄より年上だ。
「それで、あとは?」
「いいわ。そのままよ」
アルフレッダは必要もないのにワンピースのしわを伸ばし、手にしたままだった帽子をかぶる。咳払いの音を声で真似て見せる。
「わたくしは……」
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