午後の、まどろむような陽気の下。

 爽やかな風に運ばれるのは甘い香り。

 惹かれて風の元を探せば、赤い煉瓦の壁に突き当たる。大柄な男でも仰ぎ見るように高い壁は、その向こうにさらに背の高い木をちらつかせている。右へ行っても左へ行っても出入り口は見えず、壁ばかりで越えられそうにはない。

 甘い香りに誘われ、招待を受けることができるものは限られているのだ。



 蝶が一羽、招待を受けて壁の向こうへ飛んでいく。

 そこには壁のそととは違った色彩が広がっていた。

 濃い赤と、淡い桃色と、薄い緑と、艶やかな白と。清廉な黄色。にぎやかな斑はひとつひとつが表情まで違う。



 蝶はどの席に着こうか考えるように飛び、最後は木陰の黒色に向かった。足を下ろしてみると、それはずいぶん大きな茶席だった。

 蜜をいただこうととして、気づく。

 これは茶席ではない。いつもの蜜の壺が見当たらない。せっかく良い席を見つけたのにと、残念そうに蝶は別席へ移った。





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