夕暮に、カイネが浜辺に佇むようになってひと月。それに付き合ったのは半分位だっただろうか。
従兄弟に誘われて山に行った日は会うこともなかった。
その日は、夕方には雨が降るから早く帰れと言われていた。木の実を籠一杯に抱えて帰ると、村全体がざわついていた。
人が集まる方へ向かう。
干潮には崖下に行けるはずの浜は波に塞がれていた。
誰かが指をさした。崖下を。
誰かが言った。船だ。
何かが人垣から出た。カイネ。
掴もうとした手を振りほどき、波に足が叩かれる。すぐに膝が隠れ、ふらつきながら腰が濡れ、引きずられるように肩が沈んだ。崖下に辿り着いた時には頭から海水に塗れていた。細い体が岩に攀登ると、誰ともなく溜息が漏れた。
カイネはそこから動かなかった。流れついた木片を見下ろして微動だにしない。
短くはない日々を待ち続けたのに、まだ待ち足りないとでもいうのか立ち尽くす。
それはカイネが待ち詫びたものの一部でしかなかった。背は高く、鼻は低く、目は小さく、口は大きく、耳は左右に一つずつ、足は早く、手の指は一本足りないのは昔魚に齧られたらしい。
崖下に辿り着いたものはそのどれもあてはまらない。だがその人間も乗せていたはずなのだ。ひと月前に。
しばらくして嵐が来て。