「カイネと何話しよるん? 頭イカレんど」
 従兄弟たちに囲まれながら食事をするのにも慣れてきた。遅れて来ても必ずおかずが取り置かれている。
 大きな茶碗に少しだけ飯を持って貰う。
「昼食わんのか聞いた」
「やつ飯食わんのか。イカレとう」
 従兄弟の言葉に反論しるのはやめておいた。やっと慣れてきたのに、一言ですべてが水泡に帰すのも馬鹿らしい。また一からやり直すことになっても、二度と同じ面倒事はしないだろう。
 同じ言葉。同じ考え。同じ価値観--おとなしく調子を合わせていれば彼らはやすやすと受け入れる。そうして今この位置にいる。同じ釜の飯を食っている。
「カイネに近付いちゃならん。よかな?」
「うん」

「なん?」
「なんなか」
 潮騒が近い。
 赤く熟れた太陽が沈んでいく。とろとろとまどろむ赤い眼のようだ。

「帰らんのか?」
「父ちゃん来いへんもん」
 カイネは振り向かなかった。
 黒い瞳が赤と紺と金の海を見つめ、期待と不安をその色で塗り潰し、冷静に仕立てあげようとしている。
 陽が溶けきった。
「明日かな」
「明日かもね」


カイネ002  
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