「ウソつきカイネ。ホラふきカイネー」
少年たちの囃立てる声の先で、少女は黙々と魚網補修の手を休めない。少し離れたところで同じ仕事の手を休めた少女たちが笑っている。遠慮しているつもりの声は笑われる少女より遠くにいる者にも聞こえた。
「カイネ、カイネ、ウソつきカイネー」
少女の細い指は縄を手繰る。節くれ立った手の甲に縄が食い込む。黒ずんだ爪が縄を押さえ込む。長い前髪の向こうには、どんな目が潜んでいるのだろう。
じきに少女たちは昼の用意に連れだっていく。少年たちも貝をいれた桶を抱えていく。
「ハル、今日は家に来いや」
一人が声をかけるのに頷いて返した。
少女はまだ黙々と手を動かしている。じっと眺めていると、そのまま意識が吸い取られ網に織り込まれるようだ。
「昼行かんの?」
視線もあげずに少女がいった。
「カイネは行かんのか?」
「お父ちゃんがまだ帰ってこんへん」
「昨日も言うとったやんか。腹減らんのか?」
「減らん。お父ちゃん来るまで減らん」
少女はそこから動こうとしなかった。
:カイネ001
:一覧
少年たちの囃立てる声の先で、少女は黙々と魚網補修の手を休めない。少し離れたところで同じ仕事の手を休めた少女たちが笑っている。遠慮しているつもりの声は笑われる少女より遠くにいる者にも聞こえた。
「カイネ、カイネ、ウソつきカイネー」
少女の細い指は縄を手繰る。節くれ立った手の甲に縄が食い込む。黒ずんだ爪が縄を押さえ込む。長い前髪の向こうには、どんな目が潜んでいるのだろう。
じきに少女たちは昼の用意に連れだっていく。少年たちも貝をいれた桶を抱えていく。
「ハル、今日は家に来いや」
一人が声をかけるのに頷いて返した。
少女はまだ黙々と手を動かしている。じっと眺めていると、そのまま意識が吸い取られ網に織り込まれるようだ。
「昼行かんの?」
視線もあげずに少女がいった。
「カイネは行かんのか?」
「お父ちゃんがまだ帰ってこんへん」
「昨日も言うとったやんか。腹減らんのか?」
「減らん。お父ちゃん来るまで減らん」
少女はそこから動こうとしなかった。
:カイネ001
:一覧