「ニコ、ニコ」

 タダさんがニコを手招きした。奴はホイホイと着いていく。

「なんスかね」

「あれだろ、いつもの」

「あれって?」

「ホラ……あぁそっか。おまえ初めてか」

「はい?」

 ジュンさんがあたりを見回してから耳を引っ張る。いくら耳がデカイからって、ヒドイ……。



「カヤピーさ、毎年五月になるとダメなんだよ」

「ダメ? 生理とか?」

「バカ。あれだよホラ。ウツるんだよ」

「うつる? 風邪っスか」

「ちゃう! だから、落ち込むんだよ」

「あぁ、五月病」

「そ! それだ!」

 ジュンさんは指を鼻に突きつけてきた。ブタになるじゃないっスか。



「で、なんでニコが?」

「うん。わからん」

「は?」

「なんか知らんが、落ち着くらしい」

 テルならイライラするだろう。

「こっそり見てこいよ。パンダみたいに張りついてるぜ」

 パンダ? あの白黒の惰眠クマ?

「って、それ、コアラじゃ……」



 ビシッ



「あいてっ」

 鼻ピンされてしまった。デカイからって、ヒドイ……。

「教育的指導」

「どこが!」



「そんなわけでおまえ、カヤピーとニコの分、やってね」

「なんでオレが!? カヤさんはともかくニコの分まで!?」

「仲いいじゃん」

 良くない。けっして良くない。絶対に良くなんかない。

「イヤです」

「今日アイツ、トーコとペアだぜ」

「行きます!」

 テルはこぶしをグッと握って承諾した。

 しかし、集合場所に落ち合ったとき、ダブルペアだと知り、こっそり涙した。



「お! テルじゃん。報告書よろしく!」

「自分でやってください!」

「俺ってばミミズ字だから」

 本人すら読めない悪筆なんて字じゃない!



 こんな上司や先輩に囲まれた自分が、五月病にならないのが不思議だと思うテルだった。






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