「ふんふんふん、ふんふんふーん

 もぉーいーくつねーるーとー、こー」

「待てー!」

「あ、てる」

「あじゃねぇ!」

「う?」

 くりくりした目が見上げてくる。

 なんて無垢な顔なんだ。頭のネジはいくつか外れているだろうが。



「お、おまえ、今……なんの歌だ、さっきのは?」

「え? 歌? あのね、た」

「いや待て! 本当に……それか?」

「う? うん。たん」

「ゲホゴホ! 悪い、もう一回」

「だから、たんご」

「待て待て待てぇ! な、なんか、間違ってないか?」



 曲はいかにも年末に口ずさむに相応しかろうが、今は年度初めだ。春なんだ。冬じゃない。

 そして曲名が絶対に違う。全部を聞かずとも頭文字からして違う。

 いや、この場合曲名はいいんだろうか? 曲も歌詞も明らかにおかしいが、曲名だけあっているということはどうなんだ?



「ニコ。落ち着いてよく考えるんだ。おまえが歌ってたのは、本当にソレか?」

「うん」

 即答するな。

「タイトルと合ってるか?」

「うん」

 少しは考えろ。

「今、何月だ?」

「五月」

「そう、五月だ。十二月じゃないんだ。年末じゃないんだ」

「てる、アタマ大丈夫?」

 そっくりそのままお返ししよう。



「ね、てる。てるもオトコの子だよね?」

「そうだな。男だな」

「じゃぁ、これあげるね」

 ポケットからなにやら取りだす。バリッ、と袋を破り、むんずと中身を掴み取る。



 嫌な予感がした。

 そう。

 デ・ジャ・ヴ。



「おにわーそとー」



 ぺと、ぺとぺと



 甘納豆だった。

 これで一年つつがなく……



「……うがー!」

「きゃー!」



 後日、タダさんから先輩を追い掛け回したり甘納豆を投げないようにと注意され、罰掃除をいただいた。罰掃除なんて何年ぶりだろう。

 しかしタダさん。追い掛け回したことも、相手が先輩であることも認めよう。

 だが、甘納豆は譲れん!

譲ってなるものか!!





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